セントロメアの解析手法を開発 国立がん研究センターなど 疾患解明へ期待
国立研究開発法人国立がん研究センターなどの共同研究グループは、ヒト染色体の「セントロメア」について、ショートリード全ゲノム解析(WGS)データから個人ごとのタイプを推定する手法を開発した。世界各地の3,332人のゲノムデータを解析した結果、セントロメアに地域や集団による多様なタイプが存在することを明らかにした。さらに、脳腫瘍の一種である乏突起膠腫に特徴的な染色体異常の形成に、セントロメアの個人差が関係する可能性を示した。
解析が困難だったセントロメアのタイプを推定する新手法
セントロメアは染色体の中央部分に位置し、細胞分裂の際に紡錘糸が結合して染色体を二つの細胞へ正確に分配するために不可欠な領域とされている。しかし、同じようなDNA配列が長く繰り返しているため、一般的なゲノム解析では詳しく調べることが難しく、十分な解析が行われてこなかった。近年は長いDNA配列を読み取るロングリードシークエンスによる詳細な解析が可能になっていたものの、多くのDNA量を必要とし、シークエンスコストも高いため、数千人や数万人規模の研究に用いることは困難だった。
研究グループは、よく似た配列が繰り返すセントロメアの中にも、タイプによって異なる短いDNA配列が存在することに着目した。この短いDNA配列を目印としてセントロメアを配列や構造が似たタイプに分類し、ショートリードWGSデータからセントロメアのタイプを推定するソフトウェア「ascairn(エーエスケルン)」を開発した。
世界3,332人の解析で多様性を確認し疾患との関連も提示
開発された新手法を用いて世界各地の3,332人のゲノムデータを解析したところ、セントロメアには多様なタイプがあり、個人差のほかに地域や集団による違いがあることが判明した。
さらに乏突起膠腫を解析した結果、同疾患に特徴的な「1p/19q共欠失」という染色体異常の形成に、セントロメアの個人差が関連することが示された。1番染色体と19番染色体はセントロメア内部で転座し、その後に一方の染色体が失われることで1p/19q共欠失が形成される。動原体形成領域からセントロメア端までの「転座が起こり得る範囲」には個人差があり、この範囲が長いハプログループほど転座に関与しやすいことが示された。
研究体制と発表媒体
本研究は、東京都中央区に拠点を置く国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:間野 博行)研究所のゲノム解析基盤開発分野長である白石友一らの研究グループが、京都大学や名古屋大学をはじめとする国内外の研究機関と共同で実施した。主な研究担当者は以下の通りである。
- 国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 ゲノム解析基盤開発分野長 白石友一
- 京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座 教授 小川誠司(兼:同高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)主任研究者)
- 京都大学大学院医学研究科 助教 越智陽太郎
- 京都大学高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi) 特定准教授 辻村太郎
- 京都大学iPS細胞研究所 未来生命科学開拓部門 教授 山本拓也(兼:同高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)主任研究者)
- 名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科学 教授 齋藤竜太
研究成果は、米国科学誌「Cell」に米国東部時間2026年10月13日(日本時間2026年10月14日)に掲載された。
本研究によって世界中に蓄積されているショートリードWGSデータの活用が可能となり、今後は人類のゲノムの多様性に加え、がんをはじめとする疾患で染色体異常が生じる仕組みの解明につながることが期待されている。
本記事は国立研究開発法人国立がん研究センターの発表をもとに作成。
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