千葉大、ショウジョウバエの聴覚器官と関節の形成プロセスを解明
千葉大学大学院理学研究院の田尻怜子准教授と、同大学院融合理工学府博士後期課程の江珊(Shan Jiang)氏の研究チームは、ショウジョウバエの触角にある聴覚器官の形態形成過程を解析した。音を受けて振動する関節の形成プロセスや、音受容器のニューロンと関節外骨格を接続する構造の形成・伸長プロセスを明らかにしている。研究成果は、2026年10月2日に学術誌Discover Developmental Biologyで公開された。
研究の背景と目的
ショウジョウバエの触角は主に3つの節から構成され、音を受けて先端の節が振動すると付け根の関節が回転する仕組みを持つ。この回転が関節に接続する「ジョンストン器官(JO)」と呼ばれる受容器に伝わることで音が感知される。
関節構造や、JOと関節外骨格を接続する精巧な構造が遺伝子変異によって破綻すると難聴や失聴を引き起こすことが知られていた。しかし、幼虫期から成虫になるまでの間に外骨格がどのように関節を形作り、JOがどのように接続するのかを詳細に観察した研究はこれまで報告されていなかった。
研究チームは、幼虫期と成虫をつなぐさなぎの時期の外骨格とJO、およびその間の接着装置の形態を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に追跡した。
その結果、外骨格を形成する表皮が関節領域で徐々に陥入し、蛹化後約48時間には深くくぼんだ関節構造が完成した後にクチクラを分泌することが確認された。また、接着基質の構成因子であるNompAタンパク質を観察したところ、接着基質はJOの細胞から分泌され始め、表皮の最外層まで伸長していた。
JOと表皮はクチクラ分泌前から接着基質によって結びつくと考えられ、この接着は表皮の陥入過程を通じてくぼみの最深部に位置していたことから、JOが表皮の陥入を物理的または化学的シグナルを介して誘導することが強く示唆されたとしている。
今後の展望
研究チームは、扁平な組織から関節構造や接着構造ができる発生プロセスを理解できたとし、今後は関わる遺伝子の機能や物理的な作用を解析して分子・力学メカニズムの全貌を明らかにしたいとしている。今回の成果は、聴覚器官の発生や維持の分子メカニズム解明や進化機構の理解につながることが期待される。
論文情報と支援プログラム
発表された論文の情報は以下の通り。
- タイトル:Morphogenesis of the Drosophila antennal auditory structure in the pupa, with a focus on the connection between the sensory organ and the exoskeleton
- 著者:Shan Jiang, Reiko Tajiri
- 雑誌名:Discover Developmental Biology
- DOI:10.1007/s00427-026-00734-2
なお、本研究はサントリーSunRiSE 生命科学研究者支援プログラム、および科学技術振興機構(JST)次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)による千葉大学 全方位・挑戦的融合イノベーター博士人材養成プロジェクト (ALDIC-PhD) の支援を受けて実施された。
本記事は千葉大学の発表をもとに作成。
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