日本自然保護協会とUSIが質の高い海洋保護区の推進へ提言書を公表 30地域の創出目指す
公益財団法人日本自然保護協会とUMINEKOサステナビリティ研究所は、専門家による検討会での議論を取りまとめた最終報告書「質の高い海洋保護区の推進に向けた提言~海をめぐる社会生態学的危機及び自然資源を活用した沿岸域再生の将来像~」を公表しました。深刻化する海の生物多様性の劣化を食い止め、回復軌道に乗せる沿岸域の再生を掲げています。あわせて、2026年10月14日には関連するオンラインセミナーの開催を予定しています。
沿岸域の再生を目指す背景と課題
報告書では、食料供給や気候調整などを担う海の生物多様性について、自然海岸や干潟の減少、藻場の衰退、サンゴの白化、海洋生物の減少といった劣化が進行している現状を指摘しています。近年は海水温の上昇や海洋熱波の多発といった海洋環境の変化が影響を深刻化させている状況です。
こうした劣化が生態系サービスの低下を招き、沿岸域の産業衰退をもたらした結果、保全・回復活動の担い手不足や管理体制の弱体化によってさらに劣化が進む「負のスパイラル」が危惧されています。報告書ではこの事態を「社会生態学的危機」と捉え、その転換に向けた沿岸域の再生を提示しました。
質の高い海洋保護区に求められる5つの基準
手法のひとつである海洋保護区やOECMについては、面積の拡大だけでなく生物多様性の保全・回復効果という「質」を高める重要性を挙げています。目指す姿として次の5つの基準が示されました。
- 生態系や生物種の特徴・状態・課題を明確にし、重要な区域を特定して適切に保全・回復すること
- 保全・回復の目標を設定し、それに基づく管理計画を策定すること
- 幅広い関係者が参画すること
- 定期的なモニタリング調査を実施し、結果を公表すること
- モニタリング結果を踏まえた順応的管理を行うこと
さらに、全国への拡大に向けて、保全・回復の包括的な計画の策定や実施に取り組む地域を30ヶ所つくる目標を掲げています。
政策提言の要点と検討会委員
報告書では、国や地方自治体の体制づくりや現場活動の支援、継続的な財源のあり方などを踏まえ、以下の施策を提言しています。
- 海の⽣物多様性の保全・回復を国の重要政策に位置付ける
- 「海洋開発等重点戦略」の中に⽣物多様性の保全・回復を組み込む
- 海の⽣物多様性政策を推進する司令塔機能を強化する
- ⽣態学的・⽣物学的に重要な海域(EBSA)を更新する
- 質の⾼い海洋保護区・OECMを全国に拡⼤する
- 海の⽣物多様性の継続的な保全・回復の活動を⽀える財源を確保する
検討会には、白山 義久氏(京都大学 名誉教授、国立研究開発法人海洋研究開発機構地球環境部門 アドバイザー)、清野 聡子氏(九州大学大学院工学研究院 准教授)、牧野 光琢氏(東京大学大気海洋研究所 教授、笹川平和財団海洋政策研究所長)、宮原 正典氏(よろず水産相談室 afc.masa 代表)、八木 信行氏(東京大学 特命教授)、山北 剛久氏(国立研究開発法人海洋研究開発機構地球環境部門 主任研究員)が委員として参画しました。
報告書の公表にあわせ、関連するオンラインセミナーが実施されます。
- 名称:豊かな海と地域をともにつくる ― 漁業・自然・地域をつなぐ、沿岸域のこれから ―
- 日時:2026年10月14日(水)15:00~17:30
- 参加費:無料
発表元の概要
公益財団法人 日本自然保護協会は土屋 俊幸氏が理事長を務め、1951年に創立された自然保護団体です。自然保護と生物多様性保全を目的に活動を展開しています。
UMINEKOサステナビリティ研究所は粂井 真氏が代表を務め、2021年に農林水産省出身者が設立しました。持続可能な水産資源管理に関する研究と提言を行っています。
本記事は公益財団法人日本自然保護協会およびUMINEKOサステナビリティ研究所の発表をもとに作成しました。
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