犬のメラノーマ対象に抗イヌPD-1抗体の企業治験開始へ 3施設と日本全薬工業が連携
公益財団法人日本小動物医療センター、国立大学法人山口大学共同獣医学部、かもがわ動物医療センターは、日本全薬工業株式会社と連携し、犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)に対する「抗イヌPD-1抗体」の企業治験を開始します。本治験は、動物用医薬品としての承認を目指して実施されるものです。日本小動物医療センター附属日本小動物がんセンター、山口大学共同獣医学部附属動物医療センター、かもがわ動物医療センターの3施設で実施されます。
犬の悪性腫瘍と既存治療の課題
近年、ペットの高齢化に伴い悪性腫瘍の発症が増加しています。日本獣医師会雑誌 2022年 75 巻 6 号 p. e128-e133によると、犬の約18%、猫の約20%が悪性腫瘍を原因として亡くなっています。
なかでも犬の口腔内に発生する悪性黒色腫(メラノーマ)は悪性度が高く、局所での浸潤や肺などへの遠隔転移を起こしやすい腫瘍の一つです。手術や放射線治療が主要な治療法となりますが、進行例や再発例では治療選択肢が限られ、有効な全身治療が存在していません。また、口腔扁平上皮癌をはじめとする難治性腫瘍に対しても十分な治療法が確立されておらず、新たな治療法の開発が求められています。
臨床研究から承認を目指す企業治験へ
ヒト医療において、抗PD-1抗体はがんに対する免疫反応のブレーキを解除し、患者自身の免疫反応を利用して腫瘍を攻撃するがん免疫療法として用いられています。ヒト用の抗PD-1抗体を犬にそのまま使用することはできないため、犬で使用することを前提に「抗イヌPD-1抗体」が開発されました。


山口大学共同獣医学部の研究グループと日本全薬工業株式会社を中心に研究が進められ、2017年~獣医師主導臨床研究が開始されました。進行した口腔内悪性黒色腫の犬150頭を対象とした前向き臨床研究の結果は、2026年に国際的な学術誌「Journal for Immuno Therapy of Cancer」に掲載されています。
2026年9月~企業治験が開始され、定められた治験実施計画書に基づいて犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)に対する有効性および安全性が評価されます。得られたデータは、将来の動物用医薬品としての製造販売承認申請資料として使用される予定です。
治験への参加と注意事項
本治験は、犬の口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)と診断された犬のうち、定められた条件を満たす犬が対象となります。治験実施計画書に沿って検査や治療を行うため、参加前の検査や決められたスケジュールでの来院が必要となります。参加条件や注意事項は以下の通りです。

- 個々の全身状態や腫瘍の進行具合によっては治験を受けることができない場合がある
- 全ての治験について、細胞診・病理組織検査などを含め必要な検査を行う必要がある
- 2週間に1回、計6回の来院が必要となる
- 治験期間中に使用できる薬剤には制限がある
治験への参加により治療効果が得られることを保証するものではなく、予想される不利益(副作用等)や治験期間中の診療、費用負担等については実施機関から個別に説明が行われます。

実施機関の概要

本治験を実施する3機関の所在地および事業内容は以下の通りです。
- 日本小動物医療センター附属日本小動物がんセンター(所在地:埼玉県所沢市東所沢和田1丁目10番4号、事業内容:犬・猫を対象とした高度獣医療の提供、臨床研究・開発、教育活動など、Webサイト:https://jsamc.or.jp/)
- 山口大学共同獣医学部附属動物医療センター(所在地:山口県山口市吉田1677-1、事業内容:犬・猫を中心とした高度獣医療の提供、臨床研究、獣医学教育など、Webサイト:https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yuamec1/)
- かもがわ動物医療センター(所在地:京都府京都市左京区下鴨上川原町44、事業内容:犬・猫を対象とした一般診療、専門診療、高度獣医療の提供、臨床研究など、Webサイト:https://www.kamogawa-ac.jp/)
本記事は公益財団法人日本小動物医療センター、国立大学法人山口大学共同獣医学部、かもがわ動物医療センターの発表をもとに作成しました。



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