国連科学サミットでアレルギー医療・研究の患者・市民参画を議論 6つの国際提言発表
慶應義塾大学病院アレルギーセンターとNPO法人ケイロン・イニシアチブは、第81回国連総会併催科学サミット2026の公式採択プログラムとして、「世界のアレルギー医療・研究における患者・市民参画(PPIE)推進シンポジウム」を開催しました。2026年9月12日(土)に慶應義塾大学信濃町キャンパスで開催されたほか、9月19日(土)にはオンラインで動画放映が実施されました。セッションでは研究者・患者団体・産業界・行政が登壇し、議論の成果として6項目の国際提言が取りまとめられました。
環境変化と不可分なアレルギー領域におけるPPIEの重要性
アレルギー疾患は世界人口の相当数が抱える身近な疾患(コモンディジーズ)であると同時に、花粉飛散期間の延長、大気汚染、食生活と食料システムの変化、生物多様性の喪失といった地球規模の環境変化と不可分なプラネタリーヘルスの課題でもあります。
セッション前半では、キク科植物による光アレルギー性皮膚炎、花粉感作の先行のない幼児期リンゴアレルギー、製パン作業者のBaker’s asthmaと経口小麦アレルギーの合併例という3件の症例が報告されました。診断の鍵を握ったのは植物・食物・職業環境への曝露歴であり、患者本人が語る生活の情報が不可欠でした。環境の変化を最初に感知する患者の知見を研究や医療に取り込む仕組みとして、患者・市民参画(PPIE)の重要性が示されました。
全国調査が示す公的情報基盤の課題
セッション内では、2026年2〜3月に全国アレルギー疾患医療拠点病院79施設および協議会加盟団体を対象に実施された全国調査の結果(有効回答173件)が速報値として報告されました。
調査結果によると、公的情報プラットフォームは信頼性がすべての群で最も高く評価された一方、検索性の評価は最も低い結果となりました。また、PPIEに関する情報は掲載されておらず、医療従事者およびアレルギ―患者団体の大半が「得たことがない」と回答した一方、ほぼすべての回答者が掲載を希望しました。求められた水準は用語解説ではなく事例集・実践ツールキット以上でした。唯一、患者諮問パネルを備えるがん情報サービスに到達していたがん患者団体が例外であり、基盤のつくり手に参画していることの重要性が示されました。
後半のパネルディスカッションでは、「PPIEは誰のためのものか」「PPIE推進に向けた情報共有はなぜ難しいのか」という2つの問いに沿って議論が行われました。
議論の総括として、「Patient-Centered(患者中心)」という表現に対し、配慮される側に位置づけられることで疎外感を覚える患者が存在することが指摘されました。患者・市民を医療・研究の対象や中心としてではなく、共に医療と研究を進めるメンバーとして迎え、安全な体制のもとで十分なコミュニケーションを取り共通の目標に向かって歩みを進める合意が形成されました。
本シンポジウムの成果として、以下の6項目の国際提言が発表されました。
- 提言1 受益者を単一化しない(Design PPIE for layered benefit, not a single beneficiary.)
- 提言2 「中心」から「共に歩むメンバー」へ(Move from patient-centred to partnership.)
- 提言3 参画を支える基盤に投資する(Invest in the infrastructure that sustains involvement.)
- 提言4 届きにくい声に届く設計を行う(Design outreach that reaches the voices least likely to be heard.)
- 提言5 公的情報基盤をPPIEのインフラとして位置づける(Recognise public information platforms as PPIE infrastructure.)
- 提言6 安全な協働の条件を明文化する(Codify the conditions for safe collaboration.)
開催概要
- 名称:世界のアレルギー医療・研究における患者・市民参画(PPIE)推進シンポジウム(第81回国連総会併催科学サミット2026 公式採択プログラム/Science Summit 2026)
- 併催:アレルギー疾患医療連携研修(2026年度東京都アレルギー疾患医療拠点病院事業)
- 開催日時:2026年9月12日(土)15:00〜17:30(現地開催)/2026年9月19日(土)動画放映
- 会場:慶應義塾大学信濃町キャンパス 北里記念医学図書館2階 講堂 + オンライン(ハイブリッド)
- 主催:慶應義塾大学病院アレルギーセンター/NPO法人ケイロン・イニシアチブ
- 言語:日本語(ZOOM配信のみ英語への同時通訳あり)


本記事は慶應義塾大学病院アレルギーセンターおよびNPO法人ケイロン・イニシアチブの発表をもとに作成しました。
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