徳島大学など、アトピー性皮膚炎の炎症とかゆみを悪化させる脂質代謝の仕組みを解明
徳島大学や東京大学、名古屋大学などの共同研究グループは、皮膚に存在する脂質代謝酵素PLA2G2F(分泌性ホスホリパーゼA₂-IIF)が産生する脂質「リゾプラズマローゲン(P-LPE)」が、アトピー性皮膚炎における皮膚炎症とかゆみを増悪させる仕組みを明らかにしました。これまで主に免疫反応の異常として捉えられてきた同疾患において、表皮角化細胞の脂質代謝異常が炎症とかゆみを結びつける新たな病態機構であることが示されました。今回の成果により、PLA2G2F/P-LPE経路を標的とした新たな治療法の開発につながることが期待されています。
脂質代謝酵素PLA2G2FとP-LPEが炎症とかゆみを増幅
研究グループは、徳島大学大学院社会産業理工学研究部生物資源産業学域の山本圭教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部薬学域/徳島大学フォトニクス健康フロンティア研究院の三木寿美特任助教らを中心に、東京大学大学院医学系研究科の村上誠教授、名古屋大学大学院医学系研究科の秋山真志名誉教授、武市拓也教授らが参加して行われました。
培養したヒト表皮角化細胞を用いてアトピー性皮膚炎に特徴的な2型炎症環境を再現したところ、IL-4やIL-13によってTSLP受容体の発現が増加し、TSLP刺激によってPLA2G2Fの発現が増加することが判明しました。PLA2G2Fは皮膚に存在するプラズマローゲン型リン脂質を分解してP-LPEを産生し、炎症関連分子IL-33の産生を促進して表皮角化細胞の炎症応答を増幅させます。
アトピー性皮膚炎モデルを用いたマウス実験では、野生型マウスと比べてPla2g2f欠損マウスで皮膚の腫れや表皮の肥厚、血中IgEやIL-33などの炎症関連分子の増加が抑えられ、特徴的なかゆみ行動も明らかに減少しました。
また、Pla2g2f欠損マウスの皮膚にP-LPEを投与するとかゆみ行動が再び誘導される一方、P-LPEを分解する酵素やその作用を抑える処置によりかゆみが軽減することも確認されました。さらに、ヒトのアトピー性皮膚炎患者の皮膚表面を解析したところ、健常者と比べてP-LPEが増加しており、患者の一部ではP-LPEの量と疾患の重症度との間に関連がみられました。
表皮の脂質代謝を標的とする新たな治療法へ
アトピー性皮膚炎の治療は現在、免疫反応を標的としたものが中心となっています。研究グループは、今回明らかになった知見をもとに、P-LPEが細胞に認識される仕組みや炎症とかゆみを引き起こす詳細な分子機構を解明することで、表皮の脂質代謝を標的とした新しい治療法の開発を目指すとしています。
なお、本研究成果は2026年9月7日に学術誌「Frontiers in Immunology」のオンライン版に掲載されました。
論文情報
- 論文名:PLA2G2F/lysoplasmalogen axis links epidermal lipid metabolism to type 2 inflammation and itch in atopic dermatitis
- 著者:Yoshimi Miki, Natsumi Higashisaka, Honami Inubushi, Niki Hirabayashi, Kanji Watanabe, Saho Fukui, Masayoshi Onitsuka, Chiaki Fukaura, Mariko Ogawa-Momohara, Kana Tanahashi, Yuki Nagasaki, Takuya Takeichi, Masashi Akiyama, Makoto Murakami, Kei Yamamoto
- 掲載誌:Frontiers in Immunology
- DOI:doi.org/10.3389/fimmu.2026.1880255
本記事は国立大学法人徳島大学の発表をもとに作成。
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