【立命館大学】過去の医療・福祉記録、86.8%が保存を支持
過去の医療・福祉記録の保存を86.8%が支持 立命館大などの共同研究グループが調査
CATEGORY: テクノロジー

立命館大学、東京大学医科学研究所、九州大学大学文書館などの共同研究グループは、旧優生保護法をはじめとする過去の医療・福祉の記録の保存と研究利用に関する意識調査を実施しました。全国の20~69歳を対象としたオンライン調査で1,143人から有効回答を得た結果、86.8%が記録の保存を支持する一方、研究利用の受け入れやすさは利用目的や記録に含まれる情報によって異なることが明らかになりました。
記録の保存は多数が支持もプライバシー管理を懸念
調査では、回答者の86.8%が歴史的資料を「保存すべき」または「どちらかといえば保存すべき」と回答しました。保存に反対した151人に理由を尋ねたところ、「将来の利用目的が不確かだから」が47.7%で最も多く、「プライバシーが守られるか心配だから」が43.7%で続きました。保存そのものを否定するよりも、保存後の利用や管理に対する懸念が多く挙げられた形です。
望ましい保管主体としては、「作成元の医療機関や福祉施設」が36.1%で最も多く、「国の公文書館」が30.7%、「地方自治体の文書館や資料館」が13.4%となりました。
利用目的や本人・家族との関係で受け入れ度に差
個人情報を含まない記録を研究などに利用する場合、受け入れられる目的(複数回答)としては「医学研究」が77.4%と高かった一方、「社会福祉研究」は54.2%、「人文・社会科学研究」は33.9%、「教育」は24.2%、「市民による調査」は15.8%、「報道」は12.2%にとどまりました。
また、記録を研究に利用することについて「受け入れられる」または「どちらかといえば受け入れられる」と答えた割合は、個人情報を含まない記録で85.1%、祖先に関する記録で78.8%、本人または存命の家族に関する記録で71.7%となり、本人や存命の家族に関わる記録で最も慎重な姿勢がみられました。
歴史的資料の利点とリスクの認識
資料を研究に用いる利点としては、「研究を通じて過去の教訓を社会全体で共有できる」が55.7%で最も多く、次いで「医療・福祉機関が自ら公表しにくい歴史的事実を明らかにできる」が40.7%でした。
一方、リスクや欠点としては「プライバシー侵害や個人情報の漏えい」が52.5%で最多となり、「不利益や責任を避けるために情報を隠したり廃棄したりするおそれ」も36.6%に上りました。特に「記録の利用によってつらい経験を思い出す可能性」への懸念は女性で強く(女性28.4%、男性17.7%)、統計学的な補正後も差がみられました。
調査の概要と研究の背景
旧優生保護法のもとでは本人の同意によらない優生手術が16,475件記録されていますが、2023年の国会の調査では現存する記録から確認できたのは4,878件(29.6%)にとどまっています。本研究は、こうした歴史的資料の保存と利用に向けた社会的信頼の条件を把握するために行われました。
- 調査方法:調査会社のオンラインパネルを用いた横断調査
- 調査時期:2024年11月
- 調査対象:全国の20~69歳(10,950人に回答依頼)
- 有効回答数:1,143人(回答率10.4%)
- 研究担当者:立命館大学大学院先端総合学術研究科の後藤基行准教授、松原洋子特任教授、立命館大学産業社会学部の鈴木裕貴講師、東京大学医科学研究所の渡部沙織特任助教、九州大学大学文書館の赤司友徳准教授ほか
研究グループは、記録の保存と利用の審査を分け、目的別の必要性や公益性の審査、家族・子孫への影響への配慮、当事者の参画などを備えた管理体制の整備が課題になるとしています。
本記事は立命館大学、東京大学医科学研究所、九州大学大学文書館などの研究グループの発表をもとに作成しました。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



