VIEと村田製作所、イヤホン一体型脳波計で研究用機器と同等の精度を確認
神奈川県鎌倉市に本社を置くVIE株式会社は、株式会社村田製作所と共同開発を進めているイヤホン一体型EEGデバイス「VIE EEG Headphone」について、研究用の脳波計と同等の精度で音刺激に対する脳波反応を検出できることを確認したと発表しました。
本研究成果は、2026年7月26日から30日にかけてカナダ・トロントのMetro Toronto Convention Centreで開催された国際学会「IEEE EMBC 2026(IEEE Engineering in Medicine and Biology Society 第48回年次国際会議)」にてポスター発表されました。
研究の背景とデバイスの特徴
スマートフォンなどと連動する携行型脳波(EEG)デバイスの登場により、日常生活下での脳状態モニタリングへの期待が高まっています。しかし音刺激を用いた計測では、音の出力機器と脳波記録機器が分かれていることで生じるタイミングの正確な同期が課題となっていました。また、新開発機器の精度検証において、波形の類似性を示すピアソンの相関係数のみに依存すると系統的バイアスなどを見落とすリスクがありました。
今回検証された「VIE EEG Headphone」は、イヤホンの左右イヤーチップにペースト不要の乾式導電性電極を組み込み、耳に装着するだけで脳波測定が可能な設計です。音を聞かせる機能と脳波測定機能を1つの機器に統合し、配線の取り回しを不要にしています。音の信号と同期信号を1つの音声データに組み込んで内部で振り分ける「内蔵オーディオトリガー」機能も備えています(今回の検証では有線の外部トリガーを使用)。


4種の課題を用いた比較検証と結果
検証は健康な成人8名(男性7名、女性1名、20~43歳)を対象に実施されました。VIE EEG Headphoneと、研究用脳波計「Polymate Mini AP108」(ミユキ技研製、湿式電極、FCzに設置)を同時に装着し、以下の4課題に対する脳波反応を比較しました。
- 安静時課題:開眼・閉眼それぞれ180秒間、アルファ波(8~13Hz)を計測
- P300課題:全体の20%の頻度で出現するターゲット音への注意反応「P300」を計測
- MMN課題:音の変化に対する無意識の反応「ミスマッチ陰性電位(MMN)」を計測
- ASSR課題:40Hzのリズム刺激に同期する「聴性定常反応(ASSR)」を計測
評価にはピアソンの相関係数(r)、Lin’s一致相関係数(CCC)、級内相関係数(ICC)、Bland-Altman分析を組み合わせて用いました。
検証の結果、各指標において研究用脳波計との高い一致度が示されました。

- 安静時アルファ波パワー(dB):相関係数 r 0.998、Lin’s CCC 0.979、ICC(A,1) 0.99、系統誤差(バイアス) -0.25 dB
- P300振幅(µV):相関係数 r 0.999、Lin’s CCC 0.999、ICC(A,1) 1.00、系統誤差(バイアス) 0.03 µV
- MMN振幅(µV):相関係数 r 0.991、Lin’s CCC 0.989、ICC(A,1) 0.94、系統誤差(バイアス) 0.14 µV
- ASSR 40Hz 総パワー(dB):相関係数 r 0.923、Lin’s CCC 0.886、ICC(A,1) 0.94、系統誤差(バイアス) 0.28 dB
- ASSR 40Hz 位相同期度(PLF):相関係数 r 0.988、Lin’s CCC 0.980、ICC(A,1) 0.88、系統誤差(バイアス) 0.06
微弱な信号であるMMNでもICC 0.94という高い信頼性で検出され、ASSRでも総パワーと位相同期度の両面で研究用機器と比較可能な水準が得られました。
応用可能性と今後の展望
聴覚関連の脳波反応をとらえるにあたり、電極を1か所に絞った単チャンネル構成でも十分な精度が得られることが確認されたことで、認知負荷のモニタリングや聴力スクリーニング、神経変性疾患に関わるバイオマーカー探索などへの応用が期待されます。

一方で、今回の検証対象は健康な成人8名に限られているため、高齢者や疾患を持つ方などへの一般化には追加検証が必要としています。今後は、より大規模かつ多様な参加者を対象とした検証や、内蔵Bluetoothオーディオトリガーを用いた完全ワイヤレス運用の検証、長期的な再現性や耐アーティファクト性の評価を進める予定です。
論文情報および発表元概要
発表された論文の詳細は以下の通りです。

- タイトル:Validation of a Novel Earphone-Integrated EEG Device: Research-Grade Fidelity in Auditory ERPs and ASSRs
- 著者:Yusuke Yokota, Yusuke Yoshida, Yuji Nihei, Motoyasu Nakao, Minori Kusunoki, Ming Chang, Shin Koike, Yasushi Naruse, Hiroshi Kunimatsu, Yasuhiko Imamura
- 発表:IEEE EMBC 2026(The 48th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society)にてポスター発表
VIE株式会社(代表取締役:今村泰彦)は、ウェアラブル脳波計やデスクトップ版脳波解析アプリ「VIE Streamer」などを展開しています。株式会社村田製作所(本社:京都府長岡京市)とともに、本デバイスの共同研究や実証実験を進めるとしています。
本記事はVIE株式会社の発表をもとに作成しました。

ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



