TKCと宇都宮大学、会計仕訳の正常値を推測する説明可能AIを開発
株式会社TKCと宇都宮大学が共同設置する「宇都宮大学・TKC AIソリューション共同研究室」の研究グループは、会計仕訳の異常検知において本来のあるべき仕訳を推測する説明可能AI(XAI)を開発した。同研究室に出向している齊藤大輔准教授と、宇都宮大学データサイエンス経営学部およびデータサイエンスセンター副センター長の川面洋平准教授が共同で開発にあたった。研究成果は9月9日、学術誌「IEEE Access」オンライン版に掲載された。
会計仕訳における異常検知の課題

これまでのAIによる会計仕訳の異常検知の多くは、仕訳を「異常」と判定するにとどまっていた。そのため、財務諸表監査における仕訳テストなどの監査手続を実施する際や会計事務所が巡回監査をする際に、「なぜ異常なのか」や「本来の正常な仕訳は何だったのか」を監査人が一から調べ直す必要があり、大きな手間がかかっていた。
従来の技術では、正常な仕訳データのみで学習したオートエンコーダが、復元に失敗したデータを異常として検出する手法が主流となっていた。しかし、異常判定の理由として提示される数値が復元データと元データとのずれを示す再構成誤差のみであったため、監査手続の実施や監査上の判断を行うには不十分だった。
3段階で正常な仕訳候補を探索する新手法
今回開発された手法は、異常と判定された会計仕訳について、判定に影響を与えた項目と、その項目をどの値に変更すればAIが正常と判定するかという修正候補を自動で提示する。処理は以下の3段階で構成される。
- ①段階:検知
- ②段階:寄与項目のランキング
- ③段階:修正候補の探索
まず、既存の説明手法であるRESHAPEを用いて再構成誤差を仕訳項目ごとに分解し、異常判定への寄与が大きい仕訳項目の順位を求める。次に、その順位を手がかりとして、最小限の修正候補を探す反実仮想説明を適用する。反実仮想説明は従来、画像認識などの分類AIを中心に研究されてきたが、会計仕訳の異常検知に導入したのは本研究が初めてとなる。

約53万件の仕訳データによる検証結果
大企業のERP(統合基幹業務システム)形式の仕訳データ約53万件を用いた検証では、評価用に人工的に作成・注入した120件の異常を全件検知した。また、正常な仕訳約8万件のうち、誤って異常と判定した件数は31件にとどまった。
代表的な既存手法3種(Wachter法、DiCE、FACE)との比較においては、変更後にAIが全項目を正常と判定する割合を100%に保ちながら、人工異常で改変した項目を正解とした場合の完全一致率が最も高く、変更を要する項目数も平均1.18項目と最小数値を記録している。
共同研究の体制
本研究は、「会計不正を防ぐ最先端技術の研究」を目的に設置された「宇都宮大学・TKC AIソリューション共同研究室」による取り組みの一環である。
- 株式会社TKC(本社:栃木県宇都宮市、代表取締役社長:飯塚真規)
- 宇都宮大学(所在地:栃木県宇都宮市、学長:池田宰)
本記事は株式会社TKCおよび宇都宮大学の発表をもとに作成。詳細は宇都宮大学のプレスリリース(https://www.utsunomiya-u.ac.jp/docs/kawadura_20260914.pdf)に掲載されている。
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