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心肺蘇生望まぬ患者の約7割が搬送中に蘇生 岡山大が救急現場の実態を全国初調査

がんの終末期などで「心肺蘇生を望まない」と事前に意思表示していた患者の約7割が、救急搬送時に心肺蘇生を受けながら病院へ搬送されていることが国立大学法人岡山大学の研究で明らかになりました。救急隊が現場で心肺蘇生を中止できる手順を整備している消防本部は半数弱にとどまり、手順があっても半数以上で1年間に一度も使われていませんでした。救急現場で本人の意思を確認して心肺蘇生を中止するための仕組みと、その運用に大きな課題がある実態が浮き彫りとなっています。

心肺蘇生を望まない事例の約7割で処置を継続

人生の最終段階を迎えた患者が心停止時に心肺蘇生を望まないと本人や家族が希望していても、119番通報がなされると救急隊は原則として心肺蘇生を続けながら病院へ搬送します。救急現場で本人の意思を確認し、心肺蘇生を中止するための全国共通の仕組みがないためです。

岡山大学医学部(学長:那須保友、本部:岡山市北区)の田邉綾客員研究員(救命救急・災害医学)らの研究グループは、全国791の消防本部とメディカルコントロール協議会を対象に、救急隊が心肺蘇生を中止できる「手順」の整備状況と運用実態を全国で初めて調査しました。その結果、「心肺蘇生を望まない」と意思が示されていた3,308件のうち約7割にあたる2,352件で、心肺蘇生を続けたまま病院へ搬送されていたことが判明しました。

手順の整備率は47%にとどまり運用実績なしも半数超

調査によると、救急隊が現場で心肺蘇生を中止できる「手順」を整備していた消防本部は、回答のあった561本部中265本部(47%)にとどまりました。

さらに、手順を整備している消防本部であっても、その52%は1年間に一度も手順を使用しておらず、ルールの整備と実際の運用の間に溝がある状況が示されました。研究グループは、ルールの不在だけでなく、ルールがあっても現場で使われていない点が課題であると指摘しています。

現場で迷わず使える仕組みの構築が課題

田邉綾客員研究員は、心肺蘇生は救命に有効である一方、体力の落ちた高齢者には身体への負担が大きい処置でもあるとした上で、本人の願いを受け止めて穏やかな最期を支えることも救急医療の大切な役割であり、元気なうちに家族と話し合っておくことが重要であると述べています。

社会として本人の意思を受け止めるためには、ルールの策定にとどまらず、救急隊や医師、介護施設、家族が迷わず使える体制づくりが求められています。本研究は、岡山県地域医療介護総合確保基金を活用した医療介護連携体制整備事業として岡山県医師会の支援を受けて実施されました。

論文情報

本研究成果は2026年9月1日、国際医学誌『Resuscitation Plus』にオンライン掲載されました。

  • 論文名:Implementation gap in prehospital termination-of-resuscitation policies for out-of-hospital cardiac arrest with do-not-attempt-cardiopulmonary-resuscitation wishes in Japan: a nationwide survey
  • 掲載誌:Resuscitation Plus
  • 著者:Ryo Tanabe, Takashi Hongo, Tsuyoshi Nojima, Hiromichi Naito, Atsunori Nakao, Tetsuya Yumoto
  • DOI:https://doi.org/10.1016/j.resplu.2026.101474

本記事は国立大学法人岡山大学の発表をもとに作成しています。

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