上橋菜穂子の『香君』が文庫化
作家の上橋菜穂子による新たな代表作『香君』が、9月4日に文藝春秋から文庫化される。単行本では上下巻だったが、文庫版では全4巻となり、1巻と2巻が9月4日、3巻が11月6日、4巻が12月4日に刊行される。
『香君』は、優れた嗅覚を持つ少女アイシャが、香りで繋がっている世界を知り、どのような選択をし、生きていくかを描いたファンタジー長編だ。遥か昔、神郷から降臨した初代香君が携えてきたとされる奇跡の稲「オアレ稲」の力によって繁栄を誇ってきたウマール帝国を舞台に、アイシャの運命が大きく変転していく物語が展開する。
害虫はつかぬはずのオアレ稲に不思議な虫害が発生し、この稲に過度に依存していた帝国は凄まじい食糧危機に見舞われる。アイシャは当代香君と共にオアレ稲の謎に挑み、人々を救おうとするのだが――。
上橋菜穂子は、『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、『鹿の王』、『獣の奏者』などの作品で知られ、2014年には国際アンデルセン賞作家賞を受賞している世界的に愛される作家だ。
上橋は、草木が香りなど様々な方法で能動的に生の営みを繰り広げていることを知り、大きな衝撃を受けたと語る。『香君』では、意識するしないに関わらず、私たちが香りや音、ウィルスや微生物など、多くの目に見えぬものが関わり合う複雑なネットワークの中に組み込まれている世界を描いている。
文庫版の装丁は、春夏秋冬をイメージした美しいデザインになっているという。上橋は、「小さな文庫本の中に広がっている世界を、楽しんでいただけたら幸せです」とコメントしている。