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新規抗HIV薬レナカパビルの第二の作用機序を解明 熊本大と浜松医科大など

熊本大学大学院生命科学研究部の門出和精講師や浜松医科大学医学部の岩谷靖雅教授らの研究グループは、新規抗HIV薬であるレナカパビル(LEN)が持つ第二の抗ウイルス作用メカニズムを明らかにしました。粒子径計測技術や電子顕微鏡観察などの解析を通じて、同薬がウイルスの粒子形成に異常を生じさせ、感染力を低下させることを突き止めました。本研究成果は米科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に掲載されました。

AIDS(後天性免疫不全症候群)の原因となるHIV-1(ヒト免疫不全ウイルス1型、human immunodeficiency Virus Type 1)は、約200分子のカプシドタンパク質(CA)から構成される三角錐型のコアを持っています。米国Gilead Sciences 社(ギリアド・サイエンシズ)が開発したLENは、このCAを標的とした長期作用型の新規治療薬です。

これまでLENは、ウイルスが標的細胞内へ侵入してからウイルス遺伝子が細胞の染色体ゲノム遺伝子に組み込まれるまでの複製の前期過程を阻害することが知られていました。しかし、LENが示す極めて強力な抗ウイルス作用は前期過程の抑制だけでは説明できず、第二の作用機序の存在が想定されていたものの、その実体は不明のままでした。

粒子形成の異常により巨大化した非感染性粒子を誘導

研究グループがLENの後期複製過程に及ぼす影響を解析したところ、LEN存在下ではウイルスプロテアーゼによる細胞内のカプシド前駆体タンパク質(Gag)のプロセシング(成熟)が過剰に促進され、正常な粒子形成や放出が障害されることが判明しました。

さらに、mass photometry(質量光度法)と透過型電子顕微鏡(TEM)解析を組み合わせて調査した結果、LEN処理によって直径200 nmを超える不均一な巨大ウイルス様粒子(LEN-induced virus-like particles、LENiVLPs)が形成されることを発見しました。このLENiVLPsは細胞膜との融合能を維持して標的細胞内へ侵入するものの、その後のウイルス複製過程が障害され、感染性を示さない機能不全の状態になっていることが明らかになりました。

次世代治療薬の創出に向けた展望

今回の研究により、LENが成熟したCAだけでなく粒子形成過程にあるGagにも作用し、巨大かつ非感染性の粒子を形成させることが解明されました。一方で、粒子形成時に前駆体タンパク質の集合へ異常が生じる詳細な機序や、2つの作用機序におけるLENの薬剤標的ポケット部位への結合様式(ファーマコフォア)の違いはまだ明らかになっていません。

研究グループは今後、両方の作用機序についてより精度の高いファーマコフォアの特定を進めていく予定としています。阻害効果をさらに高める化合物の創出が進むことで、より強力で薬剤耐性が生じにくい治療薬の改良や開発が加速すると期待されています。

論文および研究グループの概要

本研究の詳細は以下の通りです。

  • 論文タイトル: Lenacapavir binding to immature Gag induces giant virions and causes protease-dependent inhibition of viral release
  • 発表雑誌: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
  • doi: http://doi.org/10.1073/pnas.26096344123
  • 著者: アメシメク ライト、中田佳宏、門出奈美、寺沢広美、大出裕高、佐々木博之、ルコンド コンソラタ、松井毅、ニャメ パーペチュアル、Md ジャキル フセイン、齊藤暁、澤智裕、池田輝政、前田洋助、岩谷靖雅、門出和精
  • 共同研究機関: 熊本大学大学院生命科学研究部微生物学講座、浜松医科大学医学部微生物学・免疫学講座、宮崎大学フロンティア科学総合研究センターウイルス感染制御学ラボ、名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部、東京工科大学応用生物学部化粧品コース皮膚進化細胞生物学研究室、熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター

本記事は熊本大学の発表をもとに作成しています。

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