米焼酎蔵が作る”ほぼ”日本酒のリキュール「HOBO」
福島県只見町の「ねっか奥会津蒸留所」が、日本酒の醸造技術と焼酎の蒸留技術を融合させた新しい日本の酒「HOBO(ホボ)」を発売した。HOBOは、米のみを原料とし、搾った甘酒を添加するという独自の製法(特許出願中)で作られたリキュールだ。
ねっか奥会津蒸留所は2021年5月に輸出用清酒製造免許を取得し、日本酒「流觴 -Ryu Sho-」を香港へ輸出してきた。HOBOは、その日本酒造りのノウハウと米焼酎「ねっか」の蒸留技術を掛け合わせて生まれた。醪を搾った日本酒に米焼酎を醸造用アルコールとして添加し、そこに搾った甘酒を加えるという前代未聞の製法を採用している。
HOBOの味わいは、添加する甘酒の甘さと酸味のバランスを調整することで無限の可能性を秘めている。例えば、甘酒に使う麹を白麹にすると酸味の高い甘酒になり、酸が印象的なHOBOが出来上がる。また、ベースとなる日本酒の精米歩合を変えることでも味わいは大きく変化する。
第一弾の「HOBO Standard」は、自社田圃栽培の酒造好適米「夢の香」を使った大吟醸酒をベースに、適度な甘さに調整した甘酒をブレンド。甘いのにキレがあり、食中酒に最適だと好評だ。今後は低精米酒をベースにした地元限定酒「HOBO Local」もリリース予定とのこと。
HOBOの誕生は、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出決定に端を発する。これにより香港への日本酒輸出が停止し、売り先のない在庫を抱えることになったねっか奥会津蒸留所。窮地を脱するため「日本酒ではない何か」を模索した結果、甘酒を添加した新しいジャンルの酒が生まれた。
ねっか奥会津蒸留所は、只見町の豊かな自然の中で米を栽培し、冬の雇用を生み出すことで地域に貢献してきた。環境保全にも積極的で、JGAP認証を取得した自社圃場で栽培した米のみを使用。蒸留所の電力もすべて再生可能エネルギーに切り替えるなど、サステナブルな酒造りを追求している。HOBOは、そんなねっかの挑戦の結晶と言えるだろう。