第36回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、木下直之のゾウに乗るが受賞
東急文化村は、第36回Bunkamuraドゥマゴ文学賞の受賞作に木下直之氏の『ゾウに乗る』(東京大学出版会刊)を決定したと発表した。2026年度の選考は、同賞の「ひとりの選考委員」として選ばれた博物学者・小説家の荒俣宏氏が務めた。受賞者には正賞の賞状と副賞100万円が贈られる。

受賞作『ゾウに乗る』の概要
受賞作となった『ゾウに乗る』は、戦後すぐにデパートの屋上で暮らしたアジアゾウの「たかちゃん」を案内役に、日本人とゾウの関係性を探る作品である。
作中では、戦うゾウや芸をするゾウ、祭りのゾウなどを取り上げ、「乗る」「洗う」「曳く」「食べる」といった9つのテーマから日本人にとってのゾウの存在を考察している。
受賞者・木下直之氏の経歴

受賞した木下直之氏は1954年、静岡県浜松市生まれ。東京藝術大学大学院中退後、兵庫県立近代美術館学芸員、東京大学総合研究博物館助教授、同大学院人文社会系研究科教授などを歴任した。現在は東京大学名誉教授、静岡県立美術館館長を務めている。
これまでに『美術という見世物』でサントリー学芸賞、『わたしの城下町』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したほか、紫綬褒章や中日文化賞を受賞している。

選考委員・荒俣宏氏の選評
選考委員を務めた荒俣宏氏は選評において、同賞の起源であるパリのドゥマゴ賞が持つ「権威に反発し、独自の価値観を打ち出す精神」に触れつつ、受賞しても権威にならないような見落とされた領域を掘り下げる人物として木下氏を選んだ経緯を明かしている。
荒俣氏は、木下氏が持つ「美術的価値のない美術への執着」に興味を抱いたとし、本作において架空の動物から始まってゾウをめぐる歴史や関係者に至るまで探求を深めた着眼点を評価した。
Bunkamuraドゥマゴ文学賞の概要
Bunkamuraドゥマゴ文学賞は、パリの「ドゥマゴ賞」の精神を受け継ぎ、1990年に創設された文学賞である。既成の概念にとらわれない先進性と独創性のある文学の可能性を探ることを目的としており、毎年交代する任期1年の選考委員1名が受賞作を決定する。

なお、次回となる第37回(2027年度)の選考委員は、作家で仏文学者の小野正嗣氏が務める予定となっている。
本記事は株式会社東急文化村の発表をもとに作成。
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