マッキンゼー、2035年の世界バッテリー需要は6.8TWhに拡大と予測
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2035年に向けた世界のバッテリー市場や技術進化、サプライチェーンの変化を分析したホワイトペーパー「バッテリー2035:新たな競争優位を確立する」を公開した。世界のバッテリー需要が2035年に6.8TWhまで大幅に拡大する見通しを示す一方、足元では供給過剰と価格競争が同時に進行している現状を指摘している。同社は、単純な生産能力の拡大から、低コスト化や高い歩留まりの実現を軸とした新たな競争局面に入りつつあると分析している。
需要拡大の一方で供給過剰と価格下落が進行
世界のリチウムイオン電池需要は2024年に1.0TWhを突破し、2025年には約1.6TWhに達した。同社の予測では、世界のバッテリー需要は2030年に4.2TWh、2035年には6.8TWhまで拡大し、2035年時点の需要の85%以上をリチウムイオン電池が占める見込みである。用途別ではモビリティ用途が約85%、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)が約12%を占め、地域別では中国が約49%、EUが19%、北米が14%になると予測されている。
一方で、市場では供給過剰と価格競争が起きており、2025年時点における世界のリチウムイオン電池の過剰生産能力は約900GWhに達している。世界で販売されるバッテリーの75%以上をアジアの主要メーカーが製造しており、バリューチェーンには地域的な不均衡が存在する。バッテリーパックの価格は2024年に20%低下した後、2025年にも8%下落して過去最低となる108ドル/kWhまで低下した。セル価格も74ドル/kWhまで下落しており、低原材料価格シナリオの場合、2035年の世界平均パックコストはNMCで75~90ドル/kWh、LFPで55~65ドル/kWhになると予測されている。
生産の歩留まり改善と製造技術の高度化
レポートでは、新しい生産ラインの立ち上げ初期にスクラップ率が70~80%に達するケースがあると指摘されている。原材料価格の交渉による節約額以上に、スクラップ削減によるコスト効果が大きい場合も少なくないとしている。
競争力を持つ工場においては、セル生産開始から18カ月以内に歩留まり95%以上、総合設備効率(OEE)85%以上を目指すべきだとしている。その実現に向けては、ドライ電極コーティングや高速スタッキング、高効率な充放電工程、デジタルツイン、インライン解析などを製造プロセスへ組み込む必要性を挙げている。欧州でのドライ電極コーティング導入では、設備投資とエネルギー消費の削減により2~3ユーロ/kWhのコスト削減が可能になると試算している。
次世代電池の展望とサプライチェーンの自立性

電池技術に関しては、量産EVやBESS向けにコストと熱安定性に優れるLFPが重要な材料系統であり続ける見込みである。EUでのLFPシェアは2030年に49%、2035年に52%、北米ではそれぞれ47%、49%になると予測されている。
注目される全固体電池の商用規模での量産については、2030年以降になる可能性が高いと分析されている。2030年時点での全固体電池はエネルギー密度が400~450Wh/kg、生産コストは約100ドル/kWh、充放電時間は12~20分程度と試算されるものの、界面形成や高歩留まりといった製造上の課題克服が量産の成否を左右するとしている。

また、米国とEUは負極用黒鉛や正極前駆体の世界生産シェアがともに10%未満であり、中流工程の特定地域偏在が欧米の課題となっている。単に国内にセル工場を建設するだけでなく、採掘・精錬から材料製造、リサイクルまでを含めた戦略的なサプライチェーン構築が求められている。
バッテリー市場ではモビリティ用途に加え、BESSの拡大も急速に進んでいる。世界のBESS累積導入量は2025年末時点の約200GWhから、2030年には500~700GWhまで拡大する見込みである。再生可能エネルギーの導入拡大に加え、米国を中心にAIやクラウドコンピューティングの拡大に伴うデータセンターの電力需要増加が導入を後押ししている。
ホワイトペーパーでは、2035年に向けて競争優位を確立するための領域として以下の4点を挙げている。
- コストリーダーシップ:部材構成の最適化やスクラップ削減による利益確保
- オペレーショナルエクセレンス:立ち上げの迅速化と早期の高いOEE・歩留まり実現
- サプライチェーンの国内・域内化:コストと供給安定性のバランスを取った供給網構築
- 信頼性の高い技術ロードマップ:各電池技術を見極めた早期の量産・市場投入
本記事はマッキンゼー・アンド・カンパニーの発表をもとに作成。
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