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古野電気、低コストマルチビームソナーによる養殖魚の行動監視技術を国際会議で発表

古野電気株式会社は、開発中の低コストマルチビームソナーを用いて養殖生簀内の魚群分布や魚の行動を定量的にモニタリングする技術に関する研究成果を、国際会議の「World Aquaculture Singapore 2026」および「Aquaculture Europe 2026」で発表した。日本とノルウェーの養殖場で実施した実証試験を通じて、魚群の分布や行動を2次元や3次元で定量的に捉え、養殖現場における行動モニタリングへの有効性を検証した。同社は養殖事業者や研究機関とともに技術を活用し、自動給餌とリモートモニタリングを支える基盤の構築を目指すとしている。

水中音響技術を養殖へ応用する背景

水産養殖業では、気候変動に伴う海水温の上昇や海洋環境の急変により魚の食欲や遊泳行動が日々変化し、従来の画一的な給餌では対応が難しくなっている。飼料費が生産コストの大部分を占めることから給餌ロスの削減が重要な課題となっているほか、国際的にFish Welfare(魚の福祉)への関心が高まり、魚の状態を客観的に把握する指標の重要性も増している。

古野電気株式会社はこれらの課題に対応するため、水中音響技術を養殖分野に応用し、マルチビームソナーの低コスト化、魚の行動を2次元データとして定量的に取得すること、生簀全体の魚群分布の3次元可視化を目標として研究を進めてきた。

単一の増幅器で低コスト化を図る独自アーキテクチャ

生簀全体をカバーする従来の仕組みでは100台以上の増幅器が必要だったが、同社は特許取得済みの独自アーキテクチャを採用し、単一の増幅器で同等の機能を実現して大幅なコスト低減を達成した。

装置には水深・水温・姿勢センサーが内蔵されており、1本のデジタルケーブルとイーサネット接続のみで運用できる仕様となっている。

日本とノルウェーの養殖場における実証試験

三重県尾鷲市の商用養殖場では、生簀の外側から網越しに鉛直断面を連続観測し、摂餌に伴う魚群の深度分布の変化を定量データとして記録した。魚の深さや密度の数値データは、スマートフォンアプリを通じて陸上から監視できる。徳島県阿南市ではソナーを生簀中央で360°回転させて魚群分布を3次元可視化し、底層のブリ魚群に加えて上層を遊泳するイシダイの個体を検出し、群れ単位と個体単位の両方を探知できることを確認した。

ノルウェー科学技術大学(NTNU)の研究施設では、2台のマルチビームソナーを同期させ、大型サーモンの生簀で実証試験を行った。取得画像を接合することで生簀断面のほぼ全域を連続的に可視化し、魚群の鉛直・水平方向の移動や遊泳速度の昼夜差、網の形状変化を定量的に把握した。

研究体制と今後の展望

研究は北海道大学との連携のもとで実施された。「World Aquaculture Singapore 2026」(2026年6月5日)での発表は古野電気株式会社 技術研究所 第1研究部 養殖支援技術研究室の池上 温史、岩田 光平、川上 連太郎の3名による共著、「Aquaculture Europe 2026」(2026年10月1日)での発表は同社3名とノルウェー科学技術大学(NTNU)生物科学部(オーレスンキャンパス)のChristian Stolzの共著であり、いずれも池上 温史が発表者を務めた。

池上 温史は、水面下の魚群分布を数値化できたことで給餌判断を人の経験から機械へ引き渡す道筋が見えてきたとし、今後は行動データに基づく自動給餌制御、異常行動の早期検知、魚種を超えた福祉指標の確立に向けて研究を進めるとしている。

古野電気株式会社の概要

兵庫県西宮市に本社を置く古野電気株式会社は、1948年に世界で初めて魚群探知機の実用化に成功した企業である。

  • 設立:1951年 (昭和26年)
  • 代表者:代表取締役社長執行役員 古野 幸男
  • 資本金:7,534 百万円
  • 売上高(連結):140,616 百万円
  • 従業員(連結):3,411 名
  • 上場取引所:東京証券取引所 プライム市場

本記事は古野電気株式会社の発表をもとに作成。

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