実IT支出は公式予算を15~30%上回る A.T. カーニーが論考公開
A.T. カーニー株式会社は、論考『管理の届かないIT支出が利益率を圧迫する』(英題:Ungoverned spending on IT is compressing margins)を公開した。SaaSや従量課金、生成AIの普及に伴い企業のテクノロジー支出が拡大する一方、従来のIT予算を中心とした管理体制では実支出の全体像を把握しきれなくなっている問題を指摘している。Kearneyの支援事例では実際のテクノロジー支出が公式IT予算を15~30%上回っており、同論考では支出を可視化し利益率を維持するための6つの施策を提示している。
実支出が公式IT予算を15~30%超過する背景
米国の調査会社Gartnerの予測によると、2026年の世界のIT支出は前年比10.8%増の6兆1,500億ドルに達する一方、S&P 500企業の売上高成長率に関する市場予想は1桁台半ばにとどまっている。企業のテクノロジー支出は売上高の3~5倍のペースで伸びており、売上高が4%増加する中でIT支出が10%増える状況が継続すれば、価格設定や人員配置、戦略投資といった経営判断にも影響を及ぼす可能性がある。

従来のIT予算管理では、公式IT予算の枠外で発生する支出を十分に捉えることができない。部門ごとに分散する契約や利用量を含め、実際のテクノロジー支出を一元的に把握し、経営指標と結び付けて管理することが利益率を維持するための出発点になるとしている。
IT予算管理を複雑化させる4つの構造変化

論考では、従来のIT予算管理を難しくしている要因として4つの構造変化を挙げている。
第1の変化は、永続ライセンスからSaaSへの移行である。大企業では平均660のSaaSアプリケーションが利用され、従業員1人当たりの年間費用は4,830ドルに達している。一方で企業全体のライセンス利用率は54%にとどまり、未使用ライセンスによる損失は年間平均1,980万ドルに上る。
第2の変化は、利用量に応じて費用が動く従量課金の拡大である。2025年にはITリーダーの66.5%が、従量課金またはAI関連料金の利用増により予想外の請求を経験している。
第3の変化は、アプリケーション管理がIT部門の外へ移った点である。現在、企業が利用するアプリケーションの56%は中央IT部門以外によって管理されており、全社的な支出の把握や統制が難しくなっている。
第4の変化は、生成AIの普及による新たな支出経路の拡大である。生成AIは既存SaaSへの有料追加機能、AI事業者との直接契約、従業員による個人向けツールの利用という3つの経路から企業内に広がっている。一方、生成AIの実証実験で損益への明確な効果を伴う本番運用に到達するのは5%にとどまっており、90日以内の利用状況を基準に継続可否を判断する仕組みなどが求められている。
論考では、1~2回の予算編成サイクル内に効果を確認できる取り組みとして、以下の6つの施策を提示している。
- テクノロジー支出の一元的な把握:公式IT予算、SaaS、シャドーAI(従業員が会社の承認を得ずにAIを利用すること)、クラウドの従量課金、既存ライセンスに組み込まれたAI、開発費を含む支出の一元的な把握
- 従量課金・AI料金に対応した調達の見直し:価格上昇率、トークン利用量、利用量の上限、AIモデルのバージョン固定などを契約条件に盛り込んだ調達モデルの見直し
- AI施策の段階的な審査とポートフォリオ管理:AI施策の段階別分類と、明確な審査基準および利用状況に連動したKPIに基づくポートフォリオ管理
- シャドーAIの正式な管理体制への組み込み:CIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)、法務責任者の連携によるシャドーAIの正式な管理対象への移行
- 既存システムの運用予算の圧縮とAI投資原資の確保:既存システムの運用予算の圧縮による、新たなAI投資に向けた原資の確保
- 取締役会によるIT支出の継続的なモニタリング:売上高の成長率に対するIT支出の伸びについて、取締役会による四半期ごとの継続的な追跡
また、支出の可視化と最適化を担うFinOpsの成熟度向上も、予測精度を高めるための前提になるとしている。2026年の大手クラウド事業者による設備投資は6,000億~7,700億ドルで、その約75%がAI関連に充てられると見込まれている。こうした投資は2027~2028年に企業の利用料金を通じて回収されるため、2026年中に管理の空白を埋めることが将来のコスト上昇に備えるうえで重要だとしている。
論考と監修者の概要
本論考および監修者の概要は以下の通り。
- 論考名:『管理の届かないIT支出が利益率を圧迫する』(英題:Ungoverned spending on IT is compressing margins)
- URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/ungoverned-spending-on-it-is-compressing-margins
- 監修者:川﨑 健史 パートナー、長内 正一 パートナー
- 発表元企業:A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)
本記事はA.T. カーニー株式会社の発表をもとに作成。
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