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物体の実世界サイズを脳活動からAIで高精度に解読 高知工科大学の研究グループ

高知工科大学の郎 翠さん(大学院博士後期課程3年)と竹田 真己教授(総合研究所 脳コミュニケーション研究センター/情報学群)らの研究グループは、手持ちサイズの日用品などを見たときの脳活動(fMRIデータ)から、物体の実世界サイズをAIによって高精度に解読することに成功した。解析の結果、サイズ情報は視覚野にとどまらず、頭頂葉や前頭葉、皮質下構造を含む全脳に分散したネットワークで処理されていることが明らかになった。本研究成果は、10月7日に国際学術誌Scientific Reportsオンライン版に掲載された。

手持ちサイズの微細な違いに着目した実験手法

人間は遠近感などに左右されず、対象の本来の物理的な大きさである実世界サイズを瞬時に認識できる。従来の脳画像研究ではビルとスプーンのように用途もサイズも極端に異なる対象が比較されていたため、脳が反応した要因が大きさそのものか用途なのかを区別することが困難だった。

研究グループは、手で持てる範囲の日用品に対象を絞り、網膜像のコントラストや輝度などの低次視覚特徴を統計的に揃えた上で実験を実施した。50名の健常成人に物体のサイズではなく自然物か人工物かを判断するカテゴリー分類課題を行ってもらい、その間の全脳fMRIデータを計測した。

視覚野を超えた全脳ネットワークの関与

計測されたデータに対し、最新のAIである3次元深層ニューラルネットワーク(3D DNN)と、AIの判断根拠を可視化するGuided Grad-CAMを組み合わせて解析が行われた。3D DNNモデルは、未知のテストデータに対して平均65.75%(最高モデルで69.51%)の解読精度を達成した。

可視化技術による分析では、判定に利用された主要な領域として以下の部位が特定された。

  • 後頭側頭皮質(視覚野:Ventral Occipitotemporal Cortex): 視覚的な物体認識を担い、特に大型物体に対して強い応答傾向を示した
  • 頭頂葉(Parietal Cortex): 上頭頂小葉(SPL)や縁上回、楔前部、角回などが寄与し、特に小型物体条件では小さな物体をつまむ精密把持などの運動制御や空間スケール変換と関連する後頭・頭頂経路の寄与が顕著となった
  • 前頭葉および皮質下構造: 前頭極や上前頭回のほか、島皮質、線条体(被殻・尾状核)、淡蒼球、視床、海馬が判別に寄与した

参加者がサイズを意識するタスクを行っていなかったにもかかわらずサイズ情報が高精度に解読されたことから、脳は物体を見た瞬間に自発的かつ自動的に実際の大きさを解析していることが裏付けられたとしている。

神経疾患の解明や次世代技術への期待

今回特定された脳領域は、物の大きさが歪んで見える神経疾患である不思議の国のアリス症候群(AIWS)の責任病巣と類似している。健常者の知覚メカニズムと臨床疾患のつながりを解明することで、客観的な脳画像マーカーの開発や診断補助技術への応用が期待される。

また、人間が3次元空間や物体の実世界スケールを理解する仕組みの解明は、カメラ画像から直感的に物体のサイズや掴み方を認識する次世代のロボット技術やコンピュータービジョンの開発にもつながると考えられている。

論文情報

  • タイトル:Deep-learning-based fMRI decoding of real-world size for hand-held objects
  • 著者:Cui Lang, Kosuke Miyoshi, Masaki Takeda
  • 掲載誌:Scientific Reports
  • 公開日:2026年10月7日
  • DOI:10.1038/s41598-026-74629-7

本記事は高知工科大学の発表をもとに作成されています。

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