AI需要で拡大するデータセンター、成長の鍵は地域社会からの信頼【A.T. カーニー】
ATカーニー、データセンターの地域社会からの信頼獲得に関する論考を公開
CATEGORY: テクノロジー
A.T. カーニー株式会社は、論考『データセンター成長の新たな条件――地域社会からの信頼をいかに獲得するか』(英題:Data centers: the new imperative of social license)を公開しました。AI需要の拡大に伴い電力や水への負荷が高まるデータセンターにおいて、地域社会からの信頼や承認である社会的受容(ソーシャルライセンス)を、立地や運用、投資判断に組み込む必要性を指摘しています。同社は、地域への負荷を抑えながら見える便益を生み出す施策として、「設計」「運用」「正当性」の3つの柱を提案しています。
2030年の電力消費量は約945TWhに達する見通し
本論考によると、世界のデータセンターによる電力消費量は2030年までに約945TWhとなり、世界の電力需要の3%弱を占める見通しです。米国では2023年に176TWhで国内消費量の4.4%を占めており、2028年には325~580TWh、国内消費量の6.7~12.0%に達する可能性があるとしています。
また、水利用も地域ごとの制約要因に挙げられています。ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の推計によれば、2023年の米国データセンターによる直接的な水使用量は約660億リットル、電力使用に伴う間接的な水使用量は約8,000億リットルでした。送電網の容量や水の利用可能性は地域差が大きいため、施設単位の効率にとどまらず、地域システム全体に与える負荷を踏まえた判断が求められます。
建設支出や税収だけでは懸念解消に不十分
従来、データセンター事業者が地域へ示してきた価値提案は建設支出や税収を中心としていました。バージニア州ラウドン郡では2020年のデータセンター関連税収が4億2,470万ドルに達し、同産業による推定予算コストの13倍を超えた事例があります。
しかし、財政面の便益は地域によって一様ではなく、税収だけで地域の懸念に応えられるわけではありません。バージニア州の合同立法監査審査委員会によると、一般的な25万平方フィートのデータセンターでは建設のピーク時に約1,500人が現場で働く一方、稼働後の常勤雇用は約50人にとどまるとされています。そのため、直接雇用を過度に訴求するのではなく、人材育成や地元調達、エネルギー負担の軽減などを通じて地域が実感できる価値を示すことが重要としています。

本論考では、事業者が社会的受容を獲得するための実行領域として3つの柱を提示しています。
「設計」では、AIの学習と推論の処理特性に応じた立地選択や、送電網への柔軟性提供、新たなクリーン電力・蓄電設備・ピーク需要抑制への投資を提案しています。施設が資源を調達するだけでなく、地域システム全体の容量を高める考え方です。
「運用」では、電力使用効率(PUE)の改善のみで評価せず、水利用とのトレードオフを踏まえた冷却戦略や排熱の地域利用、周辺施設への省エネ支援を挙げています。例えば、蒸発冷却は電力使用量を削減する一方で施設内の水使用量を増やす可能性があると指摘します。
「正当性」においては、地元人材の育成と調達、電源構成や水使用量の情報開示、地域への投資成果の測定と監査を求めています。地域社会との関係構築は、企業の社会的責任に付随する活動ではなく、事業の成長と資本管理に関わる中核課題であると位置付けています。
公開論考および監修者・会社概要
本論考の概要および関連情報は以下の通りです。
- 論考名:『データセンター成長の新たな条件――地域社会からの信頼をいかに獲得するか』(英題:Data centers: the new imperative of social license)
- 論考URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/data-centers-the-new-imperative-of-social-license
- 監修者:針ヶ谷 武文(日本代表 マネージングディレクタージャパン / シニアパートナー)、滝 健太郎(シニアパートナー)
- 発表企業:A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文、URL:https://www.jp.kearney.com/ )
本記事はA.T. カーニー株式会社の発表をもとに作成しました。推計データおよび雇用関連の数値は、同発表内に引用されたローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)およびバージニア州の合同立法監査審査委員会の情報に基づいています。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



