三菱総研、2035年に向けた国際秩序シナリオと政策・企業経営の針路を提言
株式会社三菱総合研究所は、2035年を視野に国際秩序の構造変化を整理し、3つの国際情勢シナリオと貿易分断の経済影響を分析した結果を発表しました。大国が単独で秩序を支えきれない「覇権国なき国際秩序」への移行を見据え、日本が目指すべき姿や政策・企業経営の具体的な方策を提言しています。
国際秩序を揺るがす5つの潮流と3つのシナリオ
同社は、いずれの大国も単独では国際秩序全体を支えきれず、多様な主体が地域・分野ごとに秩序の維持と形成を分担する世界へ移行する可能性があるとみています。この移行を促す要因として、リベラル国際主義の揺らぎ、AI覇権競争の激化、資源・エネルギーの自律性追求、安全保障環境の不安定化、経済的威圧の常態化という5つの潮流を挙げました。各国は戦略分野で自律性と強靱性を高める一方、非戦略分野では国際連携を維持・拡大する動きを見せています。
今後の世界像を左右する分岐点として、米中対立がルールの下で抑制されるか、また対立先鋭化時に第三国を陣営に束ねられるかを提示しました。想定されるシナリオは以下の3つです。
- 戦略分野の自律性と相互依存が併存する「デリスキング」
- 米中二陣営への分断が進む「デカップリング」
- 複数の勢力圏へ再編される「多極・ブロック化」

同社は、これらは一本道ではなく状況が非連続的に変わり得るため、複線的な備えが必要であるとしています。
貿易分断の影響と経済連携による緩和の試算

GTAPモデルを用いた試算では、貿易分断の対象や地理的範囲が広がるほど経済損失が大きくなる結果が示されました。一方で、戦略分野でデリスキングを進めつつ他分野で経済連携を深めることで、負の影響を緩和できる可能性があるとしています。
標準GTAP v7比較静学モデル(注1)による試算において、日本の実質GDP水準への影響はベースライン(注2)比でデリスキングのみの場合▲0.32%となる一方、インド太平洋の主要国・地域におけるFTA深化(注3)(+0.36%)を組み合わせると+0.04%となりました。また、経済連携の便益は、日本よりもASEANやインドなどの相手国・地域に対してより大きく及ぶとの結果も得られています。
- 注1:標準GTAP v7比較静学モデルを使用。労働・資本は国内のセクター間で完全移動的、国境を越える要素移動はなく、要素賦存量は固定(完全雇用)とした。求解はEuler法(自動精度制御、基準12分割)による。
- 注2:ここでの「ベースライン」とは、GTAP11b2の2017年基準データに追加ショックを与えない基準均衡を指す。
- 注3:今回の試算におけるFTA深化の対象国・地域は日本、韓国、台湾、インド、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランドとした。

信頼を実行力に変える「連携の結節点」への道筋
日本が目指すべき姿として、国際社会で培ってきた信頼を具体的な実行力へと転換し、多様な国・地域の連携を支える存在となることが挙げられています。ISEASによる調査報告(出所:ISEAS, “The State of Southeast Asia 2026 Survey Report”をもとに三菱総合研究所作成)でも、日本は適切な行動をとる国として高い信頼を得ていると示されていますが、今後は供給の継続や協力の履行を行動で示す必要があります。
同社は具体的な方策として、政府に対してはFOIP(自由で開かれたインド太平洋)を基盤とした平時の市場統合、有事の供給継続、パートナー国との能力共創を一体で進める「三位一体の経済戦略」を求めました。企業に対しては、経済安全保障を経営課題と位置づけ、サプライチェーンの可視化・診断やリスク調整後の収益性に基づく判断、事業・品目ポートフォリオの見直しを継続して回すサプライチェーン・ポートフォリオ運営を提言しています。
本記事は株式会社三菱総合研究所の発表をもとに作成されました。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。


元祖トマトラーメン三味(333) 天神大名総本店が24時間デリバリー等を開始 