BEAMとJAXA、ISSきぼうを活用したGaSb結晶成長の共同研究を開始
理化学研究所発スタートアップである株式会社 BEAM Technologies(BEAM)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探査イノベーションハブは、III-V 族化合物半導体「GaSb(アンチモン化ガリウム)」の結晶成長に関する共同研究を 2026 年 8 月 31 日より開始しました。


本共同研究では、きぼう有償利用制度を活用し、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟に搭載されている温度勾配炉(GHF 炉)を活用した微小重力環境下における GaSb 結晶成長実験の実施を目指しています。
共同研究の背景と地上での課題
III-V 族化合物半導体は、光デバイスや電子デバイスの材料として欠かせない存在です。特に研究対象となる GaSb(アンチモン化ガリウム)は、赤外線探知機や赤外線レーザー、高周波通信デバイスなどの基板として注目されており、高い信頼性が要求される宇宙産業や環境モニタリングなどにおいて極めて重要とされています。
これらの半導体デバイスをさらに高性能化・高効率化するためには、基盤となる結晶材料の低転位化(高品質化)が不可欠となります。しかし、地上におけるバルク結晶成長では、重力による熱対流に起因して結晶欠陥(転位)が導入されてしまう根本的な課題がありました。
そこで本研究では、熱対流が極めて小さくなる ISS「きぼう」日本実験棟の微小重力環境下で結晶成長実験を実施します。対流を抑制した状態における結晶欠陥の挙動や低転位化の可能性を検証し、将来的な III-V 族化合物半導体全体の高品質化に向けた基礎データの取得を目指します。
軌道上での実験内容と連携体制
実験では、ISS「きぼう」に搭載されている GHF 炉を用いて GaSb のサンプルカートリッジを搭載し、一方向凝固法による種結晶成長を行います。地上に回収したサンプルについては、エッチピット密度(EPD)測定や X 線トポグラフィーなどの結晶評価を実施し、地上で成長させた結晶と比較することで、微小重力が転位密度や結晶品質に与える効果を定量的に評価します。
両者の役割として、JAXA 宇宙探査イノベーションハブは実験サンプル準備における ISS 適合性への助言、実験運用計画・シナリオの立案支援、および軌道上実験計画の立案支援を担当します。一方の BEAM は、III-V 族化合物半導体に関する高度な専門性を活かし、宇宙実験の成果を実用デバイスの改善へと直結させる検証を担うとともに、宇宙製造プラットフォーム構築に向けた準備を進める方針です。
技術の応用と今後の展望
宇宙実験から得られた超低転位密度の結晶成長に関する知見や技術は、地上の製造プロセスへとフィードバックおよび応用され、高品質な III-V 族化合物半導体基板技術の確立を目指します。
これらの取り組みを通じて、宇宙や防衛分野をはじめとする最先端デバイスの性能向上と信頼性の飛躍的な向上に貢献していくとしています。
株式会社 BEAM Technologiesについて
株式会社 BEAM Technologiesは理化学研究所発のスタートアップで、独自のバンドエンジニアリング技術を軸に、化合物半導体 AlGaN(アルミニウムガリウムナイトライド)において世界最高水準の出力を実現してきました。現在はその結晶育成技術を応用し、AlGaN に限らず、地球の重力下では製造が困難な多様な化合物半導体の超高品質結晶を、宇宙の微小重力環境で製造するプラットフォームの構築に取り組んでいます。
- 会社名:株式会社 BEAM Technologies
- 代表取締役:飯村 一樹
- 所在地:東京都千代田区二番町 9 番地 3
- 設立:2022 年 3 月
- 事業内容:微小重力を活用した半導体製造プラットフォーム事業
- URL:https://beam-tec.co.jp/
本記事は株式会社 BEAM Technologiesの発表をもとに作成しています。
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