ソフトウェア協会、個人所得申告のデジタル化に向けた提言と英国調査報告書を公開
一般社団法人ソフトウェア協会(略称:SAJ)は、政策・法務知財委員会下の「社会的システム・デジタル化研究会」(通称:Born Digital研究会)が取りまとめた「デジタル化による個人所得申告の新しいあり方に向けた提言」および「調査報告書:イギリスにおける税務のデジタル化」を公開しました。確定申告や年末調整など、いまだ紙を前提とした年次処理の構造が残る日本の個人所得申告について、業務プロセス全体を最適化する再設計を求めています。
本提言は、電子申告や行政手続APIの普及による「電子化」にとどまらず、デジタルを前提とした「デジタル化」が必要であるとの課題意識から策定されました。研究会の試算によると、特に年末調整業務において社会全体で年間約1,000億円から3,000億円規模のコストが発生しているとされています。
こうした課題に対し、提言では年末調整・確定申告・給与支払報告・住民税・社会保険・給付などを個別に電子化するのではなく、所得情報を起点とする一連の社会的システムとして再設計することを提言しています。
提言の主な要点
提言では、主に以下の3つの方向性が示されています。
- 個人所得申告の簡易化:年末調整の簡易化と給与支払報告のリアルタイム化
年末調整を確定申告の「簡易版」として再定義し、対象者や控除の絞り込み等による徹底的な簡易化を図ることを提案しています。また、年1回の給与支払報告を月1回のデジタル報告へとリアルタイム化し、事業者報告のワンスオンリー化(一度の報告で完結する仕組み)や住民税の現年課税化に向けた継続的な検討を行うべきとしています。
- 個人所得情報基盤の整備:将来的な「ワンクリック確定申告」の実現と税・給付への活用
所得や控除の情報を本人が確認できる個人所得情報基盤の整備を提案しています。将来的にはワンクリックで確定申告を完了できる状態を目指すほか、適切な透明性やアクセス制御などを確保したうえで、所得に応じた給付や税額控除、緊急時支援等への活用も位置付けています。
- プラットフォーム連携による個人事業主の所得申告の簡易化
デジタル・プラットフォーム事業者を通じた取引データの集約や、会計・申告ソフトウェアとのAPI連携により、多様化・増加する個人事業主や副業層の負担軽減を提案しています。
英国の現地調査報告書も同時公開
提言の策定にあわせて、給与支払報告のリアルタイム化(Real Time Information: RTI)や記帳・申告プロセスのデジタル化(Making Tax Digital: MTD)を進める英国での現地調査報告書も公開されました。HMRC(英国歳入関税庁)、ソフトウェアベンダー、会計・税務専門家へのヒアリング結果がまとめられています。
調査報告書では、RTIがUniversal Creditやコロナ禍の雇用維持給付(CJRS)にも活用された所得情報基盤であったことや、MTD for VATとMTD for Income Taxにおける業務プロセス変更と追加費用の違い、導入が予定されているデジタルインボイスの位置付けなどが整理されています。これらの知見から、日本においても社会的システム全体の制度設計として捉える必要があるとしています。
関連情報
公開された資料は以下のURLから確認できます。
- 「デジタル化による個人所得申告の新しいあり方に向けた提言」(PDF 1189KB)
- 「調査報告書:イギリスにおける税務のデジタル化 〜Real Time Information、Making Tax Digital、デジタルインボイス」(PDF 926KB)
- 掲載URL:https://www.saj.or.jp/C22/notice_details/MzYGAksA
組織概要および問い合わせ先は以下の通りです。
- 組織名:一般社団法人ソフトウェア協会
- 住所:東京都港区
- 会長:田中 邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)
- URL:https://www.saj.or.jp/
- 問い合わせ先(事務局):sajoffice198602_@saj.or.jp
本記事は一般社団法人ソフトウェア協会の発表をもとに作成しています。
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