AIで病害虫予測し農薬削減 JA豊橋が防除DXアプリ導入

愛知県の農業DXスタートアップ企業「ミライ菜園」が開発したAIによる病害虫予測サービスを提供する防除DXアプリ「TENRYO(テンリョウ)」が、豊橋農業協同組合(JA豊橋)にて初のサービス導入が決定した。

「TENRYO」は、各地の20年分の気象データとアプリユーザーから集まる発生履歴を照らし合わせ、独自のAIで病害虫の発生を予測する。キャベツ、ブロッコリー、トマト、玉ねぎ、キュウリ、いちご、大根の7種の農作物に対応しており、AIによる発生警戒アラートで適切なタイミングでの防除が可能となる。これにより、農薬の使用量を必要最小限に抑えることができる。

ミライ菜園は2022年より愛知県、群馬県の農協と連携し、約50軒の農家にて実証実験を重ねてきた。その結果、15%の収量増を達成した若手ブロッコリー農家や、AI予報を参考に臨時で防除を行い収量が4%増加したベテランキャベツ農家もいるなど、高い効果を発揮している。

JA豊橋では、「TENRYO」を農家へ栽培技術や経営に関するアドバイスを行う「営農指導」や、農薬散布スケジュールをお知らせする「一斉防除」に活用する予定だ。マップ上にユーザーからの発生報告が随時共有されるため、地域の発生状況がリアルタイムで可視化できる。気候変動や異常気象により病害虫の発生予測が難しくなる中、指導員のノウハウにAIなどの最新技術を組み合わせることで、より高度な営農指導を目指す。

病害虫による農業被害は、収穫量の約40%にも及ぶと言われ、農業を行う上で大きな経営リスクとなっている。病害虫を防ぐには「適切なタイミング」での農薬散布が効果的だが、昨今は気候変動の影響もあり、発生予測が非常に困難になっている。ミライ菜園は、AIでより正確な発生予測を農家に提供することで、最適なタイミングで必要最小限の農薬だけ使用できると考え、「TENRYO」の開発を進めてきた。独自の病害虫発生履歴ビッグデータを活用した世界初の病害虫予測AIで、特許も取得している。

ミライ菜園の畠山友史代表取締役は、「病害虫被害は直接的に農家の収益を損なうだけでなく、生産現場での甚大なフードロスと捉えることもできる。防除指導のDXを通して被害を減らすことは、農業の環境負荷低減にもつながる」と述べ、本サービスの普及を通じ、農家の所得向上や持続可能な農業の実現に貢献していく考えを示した。

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