賃金デジタル払い9割導入せず

政府は2023年4月に給与の一部をデジタルマネーで受け取れる「賃金のデジタル払い」を解禁し、同年9月には通信サービス大手のソフトバンクグループ各社が国内で初めて希望する社員に対し、給与をキャッシュレス決済サービス「PayPay」で支払った。帝国データバンクが企業1,479社を対象に実施したアンケート調査によると、賃金のデジタル払いについて「導入予定はない」と回答した企業は88.8%に上った。一方、「導入に前向き」な企業は3.9%にとどまった。

導入に前向きな理由としては、「振込手数料の削減」が53.8%でトップ、次いで「従業員の満足度向上」が42.3%、「事務手続きの削減」が32.7%と続いた。他方、導入予定がない理由は、「業務負担の増加」が61.8%で最も多く、「制度やサービスに対する理解が十分でない」が45.0%、「セキュリティ上のリスクを懸念」が43.3%、「コストの増加」が39.2%と続いた。

調査結果から、賃金のデジタル払いの普及には、業務負担の増加やセキュリティリスクへの懸念、制度・サービスに対する理解不足などが障壁となっていることが明らかになった。また、デジタル払いに対応する店舗や施設が少ないことや、従業員からの要望がないことも導入を妨げる要因となっている。利用拡大のためには、制度・サービスに関する情報周知の徹底、セキュリティ強化とその情報共有、店舗などでのデジタル払いの導入と消費者の利用を促す政策の強化が求められるだろう。

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