Blossom Energyら、HTGR搭載の原子力推進LNG船の技術・経済性を評価
株式会社Blossom Energyは、American Bureau of Shipping(ABS)および海運会社と共同で、高温ガス炉(HTGR)を搭載した原子力推進LNG船の技術・経済性評価を実施しました。研究成果は、2026年9月14日~17日にタイ・バンコクで開催された国際会議「Gastech 2026」にて発表され、技術論文「Techno-Economic Assessment of a Nuclear-Powered LNG Carrier」として公開されました。IMO Net-Zero Framework(NZF)のGHG課金シナリオにおいて、従来のLNG燃料船と比較して総所有コスト(Total Cost of Ownership:TCO)を最大15%低減できる可能性が示されています。
共同研究の背景

国際海運業界では温室効果ガス排出削減に向けた規制対応と、船舶のライフサイクルコストの両立が課題となっています。原子力推進は軍用艦艇や砕氷船で運用実績があるものの、商用船への導入には安全規制や港湾アクセス、燃料供給、保険、初期投資といった技術面・制度面の課題が存在します。
大きな機関室と高いエネルギー需要を持つLNG船は原子力推進の有望な適用候補とされていますが、詳細な技術・経済性評価の公開文献は十分ではありませんでした。そこで、船舶・海洋分野の知見を持つABS、運航知見を持つ海運会社、HTGRの設計・開発を行う株式会社Blossom Energyが共同で検討を実施しました。
174,000m³級LNG船を対象とした評価概要
本検討は2025年12月から約3か月にわたり、複数回のワークショップ形式で行われました。174,000m³級LNG船を対象に、原子炉の寸法、重量、出力、燃料交換周期、船体配置、電気推進システム、バッテリー、非常用推進設備などを検証しました。
評価の前提条件として、2040年の就航、25年間の船舶寿命、5%の割引率を設定し、ライフサイクル全体のTCOを現在価値で算出しています。参照炉には株式会社Blossom Energyが開発する20~25MWe級の高温ガス炉(HTGR)を採用し、約17m×15m×22m、約6,000トンのシステムが想定されました。
経済性評価の結果とコスト低減の可能性
経済性の評価において、原子力推進船の初期投資額は従来LNG船の約2.5倍となるものの、燃料費の大幅な低下と運航時のGHG排出に伴う課金回避が可能であることが示されました。IMO NZF課金シナリオでは、fleet poolingによる余剰コンプライアンス・クレジット活用を考慮した場合にTCOが従来船比で15%低減し、プーリングを考慮しない場合でも4%低減する結果となりました。
一方で、GHG課金を考慮しない場合はFirst-of-a-Kind(FOAK)の原子炉コストでは競争力確保が難しく、量産化や設計標準化、船舶の最適化によるコスト低減が重要である点も示されています。
研究の意義と今後の展望
本研究では、株式会社Blossom Energyが開発するHTGRのTRISO燃料やヘリウム冷却材による安全性、動揺への適応性が評価されたほか、日本国内で培われた陸上HTGRの実績がコスト評価に参照されました。さらに、船舶寿命を25年、SMR寿命を50年として別の船舶へ再搭載する「長期エネルギー資産」としての事業モデルも検討されています。
株式会社Blossom Energyは、今回の知見を踏まえて高温ガス炉の経済性向上に向けた技術開発を進め、黒鉛熱エネルギー貯蔵技術などを通じた脱炭素化と安定供給の実現を目指すとしています。
会社概要
- 企業名:株式会社Blossom Energy
- 設立:2022年1月
- 本社所在地:東京都台東区浅草7丁目6−1
- 代表取締役CEO:濱本真平
- 事業内容:発電等に⽤いる設備の設計・製造・販売
- URL:https://www.blossom-energy.co.jp/
本記事は株式会社Blossom Energyの発表をもとに作成しました。
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