Dellows News

ロート製薬と三重大、冬虫夏草が脳内神経回路形成やエネルギー代謝に及ぼす影響を確認

ロート製薬株式会社と国立大学法人三重大学の研究グループは、伝統的薬用素材である冬虫夏草(Hirsutella sinensis菌糸体)の長期投与が、脳内の神経回路形成に関わる遺伝子発現および脳内エネルギー代謝に影響を与える可能性を明らかにした。本研究成果は、2026年8月23日に第43回和漢医薬学会学術大会で口頭発表された。

研究の背景と目的

冬虫夏草は中国・チベット高原を中心に分布する昆虫寄生性の菌類で、古くから滋養強壮や疲労回復などを目的に利用されてきた伝統的薬用素材である。ロート製薬株式会社は2025年に冬虫夏草が神経細胞およびゼブラフィッシュの中枢神経系機能をサポートする可能性を報告していたが、脳内の分子・代謝メカニズムは十分に明らかになっていなかった。

そこで、ロート製薬株式会社と三重大学大学院地域イノベーション学研究科の西村訓弘教授、大学院医学系研究科・ゼブラフィッシュリサーチセンターの島田康人講師らの共同研究グループは、冬虫夏草の長期投与後の脳における遺伝子発現と代謝物を網羅的に解析し、神経回路形成およびエネルギー代謝への影響を検討した。

神経回路形成に関わる遺伝子発現の増加を確認

研究では、7か月齢の野生型ゼブラフィッシュ(雌雄各半数)に冬虫夏草粉末を500 mg/kg体重/日の用量で6か月間経口投与し、脳の網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq解析)を実施した。

解析の結果、冬虫夏草投与群において、神経細胞同士のつながりの形成や情報伝達、神経回路の組み替えに関わる遺伝子(HTR2B、SHANK1、ROBO1、SEMA6B、ERBB3など)の発現増加が認められた。これにより、冬虫夏草の長期投与によって神経回路を形成・維持しやすい方向に遺伝子発現が変化する可能性が示された。

脳内エネルギー代謝の活性化を示唆

脳内の代謝物を調べるメタボローム解析(CE-TOFMS)を行ったところ、グルコースからエネルギーをつくる解糖系に関わる中間代謝物が増加していることが確認された。

具体的には、以下の変化が確認された。

  • グルコース6-リン酸が1.4倍に増加
  • フルクトース1,6-ビスリン酸が1.8倍に増加
  • ジヒドロキシアセトンリン酸が2.1倍に増加
  • 細胞がエネルギーを利用した後に生じるADPが1.7倍に増加

細胞の主要なエネルギー源であるATP量は対照群と同程度に維持される一方、解糖系の中間代謝物やADPが増加したことから、脳内においてエネルギーの産生・利用・再生サイクルが活発に回る状態が示唆された。

今後の展望

研究グループは、冬虫夏草が神経回路の「形成・維持」と、それを支える「エネルギー基盤」という複数の側面から中枢神経系に作用する可能性が示されたとしている。ロート製薬株式会社は、今後も作用に関わる成分や標的分子の解明を進め、科学的根拠に基づく素材開発や製品設計につなげることを目指す。

本記事はロート製薬株式会社の発表をもとに作成されました。

アクセスランキング

今日

1週間