ティムス、脳腫瘍治療薬NOX-A12の世界開発権巡り独占交渉へ
株式会社ティムスは、ドイツのベルリン市に拠点を置くTME Pharma A.G.との間で、脳腫瘍を対象として開発中のNOX-A12(olaptesed pegol)の世界での開発権を目的とした独占交渉に関するタームシートを締結した。同社は本プロジェクトを目的とした子会社を日本で設立し、一定の資金を獲得した段階でTME Pharma A.G.とグローバルでの開発・製造・販売権に関する正式契約の締結を目指す。独占交渉権の対価として同社が支払う金額は最大で30万ユーロとなる見込みで、今期業績への影響は軽微としている。
本件タームシートでは、拘束性を有する独占交渉に関する条項のほか、拘束性を持たない条項として初発膠芽腫(グリオブラストーマ、GBM)を対象とした第Ⅰ相/第Ⅱ相臨床試験「GLORIA」の新たなコホートの実施などが盛り込まれた。また、株式会社ティムスが日本で設立する新会社が一定の資金を獲得した段階で正式契約を結ぶことや、TME Pharma A.G.が新会社の少数株主としてプロジェクトに関与することなども含まれている。
独占交渉権の対価は最大で30万ユーロと定められているが、外部資金の獲得見込の状況などを踏まえた両者の合意により変更される場合を除くとされている。株式会社ティムスの代表取締役社長である若林拓朗は、少数症例ながら顕著な臨床試験結果を有するNOX-A12の開発に関与することへの期待を示すとともに、新会社が日本企業となることから日本での開発も積極的に検討していく方針を示している。
治験薬「NOX-A12」の作用機序と臨床試験実績
NOX-A12は、成人の脳腫瘍の中で最頻かつ最も悪性度が高いとされる膠芽腫を対象とした臨床開発がドイツで進められている。作用機序は、血管形成(vasculogenesis)に重要な役割を果たすケモカインの一種CXCL12を特異的に阻害し、放射線照射によって破壊された腫瘍周辺の血管が再構築されるのを妨げるものである。これは、VEGFを通じて起こる血管新生(angiogenesis)とは異なる作用とされる。
GLORIA試験では既に複数コホート17症例に対する投与と解析が実施された。このうち、放射線治療および抗VEGF抗体ベバシズマブを併用した手術不完全・MGMT非メチル化の患者6例を対象とするExpansion Cohortにおいて、全生存期間(Overall Survival、OS)が治療群19.9ヶ月となり、ヒストリカル・コントロールの9.5ヶ月に対して統計的に有意な効果を示した。なお、この結果は2026年4月に学術誌Nature Communications上で発表されている。また、同剤は米国においてオーファン・ドラッグ指定およびファスト・トラック指定を受けており、ヨーロッパにおいてもオーファン・ドラッグ指定を受けている。
今後の臨床開発方針
プロジェクトにおける臨床開発計画として、GLORIA試験の新規コホートにおいてPOC取得のために5アーム×20症例、計100症例の非盲検臨床試験を実施し、進捗に応じて随時解析を行う予定である。当初は既に6施設が稼働しているドイツで試験を開始し、IND(新薬臨床試験開始申請)が承認済みの米国や、日本での実施も検討するとしている。ただし、この臨床開発計画はタームシートの拘束力を有しない条項に記載された現時点の想定であり、今後の協議や資金調達などの条件によって変更または実施されない可能性がある。
株式会社ティムスの概要
- 会社名: 株式会社ティムス
- 事業内容: アンメット・メディカル・ニーズに応えるバイオ医薬品企業(研究段階から臨床段階まで)
- 主な研究開発品・パイプライン: 真菌由来のSMTPs(Stachybotrys microspora triprenyl phenols)と呼ばれる低分子化合物ファミリー、急性期脳梗塞治療薬のリードパイプライン「TMS-007(JX10)」、急性腎障害や脊髄損傷に対する治療薬パイプライン
- ウェブサイト: https://www.tms-japan.co.jp/
本記事は株式会社ティムスの発表をもとに作成。学術誌の情報はFrank A Giordano et al. “RNA aptamer-based CXCL12 inhibition combined with radiotherapy and bevacizumab in newly-diagnosed glioblastoma: expansion of the phase I/II GLORIA trial” Nature Comm. 2026を参照。
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