九州工業大学とJAXA、AIで衛星帯電を自動検出 宇宙環境の特徴解明
国立大学法人九州工業大学大学院工学研究院宇宙システム工学研究系の寺本 万里子准教授と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門第一研究ユニットの奥村 哲平主任研究開発員らは、九州工業大学とJAXAの共同研究を実施した。人工知能(AI)を用いて約19年分の人工衛星の観測データを解析し、衛星表面の帯電現象を自動的に検出する手法を開発するとともに、人工衛星が帯電しやすい宇宙環境の特徴を明らかにした。
本研究の解析は、同大学同研究院基礎科学研究系 花沢 明俊准教授と同大学大学院を修了した升野 颯人さん、荒木 大地さんを中心に、国立大学法人新潟大学大学院自然科学研究科電気情報工学専攻/工学部 知能情報システムプログラムの飯田 佑輔准教授によるAIの検証方法に関する専門的な助言を受けながら行われた。
AI技術を活用して約3,000件の帯電イベントを抽出
従来、膨大な観測データから帯電現象を人の目で確認することは難しく、長期間の統計的な解析には大きな作業負荷がかかっていた。
研究グループは、人工衛星の表面帯電を長期間にわたって調べるため、人工知能(AI)の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた自動検出手法を開発した。約19年分の観測データを解析して約3,000件の帯電イベントを効率的に抽出することで、人工衛星が帯電しやすい時間帯や宇宙環境の特徴、発生条件を詳しく調べることが可能になった。
解析の結果、オーロラを起こす電子が人工衛星の帯電を強める一方で、衛星の周りにある電離圏のプラズマが帯電を抑える働きをしていることが判明した。人工衛星の帯電は、オーロラを引き起こす電子だけでなく、周囲の電離圏プラズマとのバランスによって決まることが定量的に示された。
人工衛星は地上の機器のように大地へアースすることができないため、宇宙空間を飛び交う電子などが表面にたまると表面が電気を帯びる現象(表面帯電)が起きる。衛星表面の場所によって帯電の程度に差が生じると大きな電位差ができ、火花のような放電が発生することがある。この放電によって太陽電池や表面材料が損傷したり、衛星の正常な運用に影響を与えたりする可能性がある。
なお、オーロラは高度100km~300km上空の大気中の原子や分子に高いエネルギーの電子が衝突して光る現象であり、地球の上空約60~1,000 kmに広がる電離圏は多くの低軌道人工衛星が飛行する領域となっている。
衛星故障の回避や安全運用に向けた今後の展望
今回の成果は、人工衛星が強く帯電する宇宙環境をより正確に把握し、将来的な衛星の帯電・放電リスクの予測や、宇宙環境による衛星故障の回避につながることが期待されている。
今後は、さらに過去のオーロラ活動が活発だった時期まで解析対象を広げ、オーロラの活動と電離圏の状態をあわせて調べる方針だ。これにより、人工衛星が帯電しやすい時期や場所の予測につなげ、衛星をより安全に運用するための技術に役立てることが期待されるとしている。
論文情報
本研究成果は、米国地球物理学連合(AGU)が発行する学術誌「Space Weather」に2026年10月27日付けで掲載された。また、2023年度から始まった日本学術振興会科学研究費助成事業(基盤研究S、JSPS科研費JP23H05429)「惑星放射線帯消失モデルの実証と能動的制御方法の開拓」の支援を受けている。
- タイトル:Development of an Automatic Detection System for Satellite Surface Charging Using DMSP Observation Data and Investigation of the Surrounding Plasma Environment
- 著者名:HAYATO MASUNO, Mariko Teramoto, Daichi Araki, Yusuke Iida, Akitoshi Hanazawa, Kentaro Kitamura, Teppei Okumura, Hiroyuki Okamoto
- 雑誌:Space Weather
- DOI:https://doi.org/10.1029/2026SW004944
本記事は九州工業大学および宇宙航空研究開発機構(JAXA)の発表をもとに作成。
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