プレシジョン、医療LLM追加学習で疑わしい病名が3.0%に 日本語入力を商用化へ
株式会社プレシジョンは、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)第3期研究開発課題「統合型ヘルスケアシステムの構築」のテーマB-2およびB-6の研究経過報告として、国産LLM「LLM-jp-4」に独自追加学習を行った医療特化のエージェントLLM「SIP-jmed-LLM-Precision」の評価結果を発表した。約3万例の症例を整理した「疾患因果ダイアグラム」を活用したところ、ハルシネーションが疑われる病名の割合が15.5%から3.0%へ減少した。あわせて同社は、研究成果を活用した医療用日本語入力「今日の医療AI日本語入力(Precision IME-med)」を商用化する計画も明らかにした。
症例報告のエッセンスを学習した医療特化LLMを開発
汎用のLLMを用いて鑑別診断(患者の症状や検査結果から考えられる病気を挙げ、絞り込んでいく過程)の病気を絞り込もうとすると、表記の誤りや実在しない病名が提示される課題があった。追加学習前のモデルでは外来語の誤った音写や英語表記の病名が挙げられ、医師が確認する手間が生じていた。
そこで同社は、プログラムディレクターである永井 良三 自治医科大学学長が約10年をかけて整理した約3万例の「疾患因果ダイアグラム」を用いて、国立情報学研究所などが開発する国産LLM「LLM-jp」のモデル「llm-jp-4-32b-a3b-thinking(LLM-jp-4 32B-A3B)」に独自追加学習を実施した。疾患因果ダイアグラムは、症例報告をもとに患者の背景、症状、検査所見から診断に至る因果のつながりを図式化し、約5万語の用語辞書で医学用語を統一して整理したものである。
開発された「SIP-jmed-LLM-Precision」は、症例の所見から検索語を用意して疾患因果ダイアグラムを検索し、関連する症例と疾患を順位付けて提示するエンジンとして機能する。なお、本モデルは医師が参照するための情報を提供する研究開発段階のものであり、確定診断を行うものではなく、医療機器としての承認を受けたものでもない。
評価試験でハルシネーション疑いの病名割合が減少
医師が作成した症例問題のうち、学習に使用していない100問を用いて学習前後のモデルを比較した評価試験が実施された。
その結果、モデルが挙げた病名のうち医学辞書にもWeb検索にも見つからない病名(ハルシネーションの疑いがある病名)の割合は、学習前の15.5%(998件中155件)から学習後は3.0%(998件中30件)に低下した。あわせて、疾患因果ダイアグラムの検索結果を並べ替えるリランキングエンジンとしても機能し、正解の疾患を上位10件に挙げた率は27%から65%に上昇した。症例報告のエッセンスを学習させることで、提示される病名の確かさと正解の疾患を挙げる率がともに向上することが確認されたとしている。
株式会社プレシジョン代表取締役の佐藤 寿彦氏は、症例報告のエッセンスを学ぶことでAIが賢くなるとし、「医師が症例について調べるときにAIを使うには、正しい病名が含まれていることに加えて、示された病名を一つずつ確かめる手間が少ないことが求められます」とコメントしている。
同社はSIPの研究成果の社会実装の一環として、医療用日本語入力「今日の医療AI日本語入力(Precision IME-med)」を商用化し、2026年10月から販売する。
本製品は、LLM-jpに対して医療向けに追加学習を行い、医療特化型生成AIである「SIP-jmed-LLM 8x13B」や「SIP-jmed-LLM-Precision」の出力を追加で蒸留学習させたエンジンを、変換候補の並べ替え(リランキング)に用いている。文章を生成せず辞書内の変換候補の順番を決める仕組みのため、辞書にない語や実在しない病名を作り出すハルシネーションは仕組み上発生しない。確定操作は利用者が行う。また、パソコンの日本語入力として動作するため電子カルテ側の改修を行わずに使用できる。
今後は、確定後の文章の文脈を読み、同音異義語の取り違えの可能性がある場合に別の候補を提示する「変換の見直し提案」機能の提供も予定されている。
株式会社プレシジョン 概要
- 代表取締役:佐藤 寿彦
- 本社所在地:東京都文京区本郷4丁目2-5 MAビル7階
- 電話番号:03-5615-8062
- URL:https://www.premedi.co.jp
本記事は株式会社プレシジョンの発表をもとに作成。
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