NTT、既存ソフトウェア資産をAIが理解・活用できる状態に変換する技術を確立
東京都千代田区に本社を置き、島田 明が代表取締役社長を務めるNTT株式会社は、既存のソフトウェア資産をAIが理解・活用できる状態に変換する技術を確立しました。仕様書や設計書などのドキュメントとコード、テストの依存関係を解析して不整合や記載漏れを検出・補完し、不足するテスト観点やテストケースを自動で補完します。これにより、既存システムの理解・改修・検証を一貫して生成AIで実行可能にし、AI-Native開発への転換を支援します。
追加開発における成果物の不整合とテスト不足が課題に
生成AIによるソフトウェア開発の効率化は新規開発を中心に進められている一方、『ソフトウェア開発分析データ集2022』によると、ソフトウェア開発の約6割は改修・保守・再開発といった追加開発が占めています。長年運用されてきたシステムでは、改修を重ねる過程で設計書と実際のコードに不整合が生じやすく、修正箇所の特定や他機能への影響確認に多大な負担が生じていました。こうしたドキュメントの陳腐化や、確認用テストの整備・自動化の不足は、生成AIがシステムの構造や仕様を把握する上でも大きな障壁となっていました。
資産を整理する2つの解析・生成技術

NTT株式会社は、既存のソフトウェア資産をAIが理解・活用できる状態(AI-Ready)へ変換するため、2つの技術を確立しました。
- トレーサビリティ解析技術
要求工学に関するISO等の国際標準・ガイドラインを基に、成果物の構成や関係を自動的に構造化します。ドキュメントごとに異なる記載形式や情報量に対し、機能との関連度に応じて分割粒度を動的に調整します。さらに前工程の要点を基に後工程の情報を復元して情報量や粒度をそろえ、依存関係を判定することで、工程間の記載漏れや不整合を高精度に把握します。

- 網羅的なテスト自動生成技術
整合性を確保した仕様・設計・コードと、ISO品質特性に基づき、システムのどの機能をどの観点から確認すべきかを整理した「テスト観点空間」を構築します。蓄積された既存テストをこの空間に対応づけて不足領域を可視化し、異常系や境界値、複数条件の組合せなどを特定した上で、決定表などのテスト技法を用いて自動実行可能なテストを体系的に生成します。
予備実験で不整合検出率80%を達成し潜在バグも検出

本技術の有効性を検証するため、Macchinetta Frameworkのサンプルアプリケーション「ATRS」( https://github.com/Macchinetta/atrs )を用いた予備実験が行われました。
トレーサビリティ解析技術の評価では、設計書に意図的に埋め込んだ41件の誤りに対し、従来手法であるRAGでの検出が11件(27%)にとどまったのに対し、提案手法では33件(80%)を検出しました。評価対象や条件は異なるものの、レビューによる欠陥検出率が平均68%と報告されている既存研究(What We Have Learned About Fighting Defects, Proceedings of the 8th IEEE International Symposium on Software Metrics (METRICS 2002))の水準を上回る結果となりました。
また、対象アプリケーションのコード規模(約32 KSLOC)を踏まえて意図的に埋め込んだ6件のバグに対する評価では、4件(67%)を検出しました。あわせて、入力検証やエラーメッセージに関するテストが網羅されていなかった箇所から、既存の潜在バグを3件検出しました。仕様書等から生成AIで直接テストを生成した場合にはこれらのバグは検出できず、体系化された観点とテスト技法の適用による有効性が示されました。
今後の展開

今後は、多様な規模や特性を持つ既存システムへの適用評価を進め、対象成果物やプログラミング言語、品質観点などの拡充を図る方針です。実際の開発・保守案件へ適用し、システム理解から改修、テスト実行までを一気通貫で支援する技術の実用化をめざします。なお、本研究成果は2026年11月18日~25日に開催されるNTT R&D FORUM 2026( https://www.rd.ntt/forum/2026/ )に展示予定です。
本記事はNTT株式会社の発表をもとに作成されました。
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