ADL、再生医療エコシステムの確立に向けたホワイトペーパーを発表
アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社は、学術有識者の監修のもと、ホワイトペーパー「革新的な再生医療への患者アクセス向上を支えるエコシステムの確立― 戦略産業化に向けた官民投資と制度基盤の在り方―」を発表した。

日本における再生医療の患者アクセス向上と産業発展に向けて必要となる政策の方向性を検討し、その成果を取りまとめている。


日本の再生医療が抱える現状と課題

再生医療等製品は、単回または少数回の投与で長期寛解や機能回復、治療不要期間などを実現し得るものであり、患者や家族の苦痛や負担を軽減するほか、医療・介護費や生産性損失の抑制にもつながるとされている。日本は、iPS細胞などの基礎研究や柔軟な規制制度、高度なバイオものづくり基盤を有しており、2026年7月21日閣議決定の政府戦略でも、戦略17分野の「創薬・先端医療」「合成生物学・バイオ」において、バイオ医薬品・再生医療等製品などが主要な製品・技術に位置づけられている。

一方で、欧米に比べて再生医療エコシステムは未成熟で、患者アクセスも限定的となっている。日本における再生医療等製品の人口当たり投与数は、現状、欧州主要国(フランス・ドイツ)の40%程度にとどまり、外部環境変化によって患者アクセスの格差はさらに拡大する懸念がある。加えて、国内供給品の多くが海外製造に依存しており、国内製造産業における事業機会の逸失や海外への資金流出、経済安全保障上のリスクが課題となっている。

政策推進による患者アクセス向上と産業規模の拡大

本ホワイトペーパーでは、基礎研究、臨床開発、製造、承認、商業化を支える政策が、「患者アクセスの向上」と「再生医療・関連産業の成長」に与える影響について定量分析を行っている。バリューチェーン全体に必要な政策を実施すれば、ドラッグラグ・ロスの解消と投与拡大が進み、2035年には患者アクセスが欧州主要国と同水準に達し、開発品数も大幅に増加するとみられる。
さらに、国内CDMOを含むサプライチェーン上企業への経済波及効果を含めると約1兆円規模の産業となり、経済安全保障の強化や地方創生にも貢献するとされている。再生医療エコシステム内企業による年間売上総和は、現状推計の約1,100億円に対して2035年は約9,400億円に達し、再生医療及び関連産業は1兆円規模の産業になることが見込まれる。

医療費負担の許容可能性と財政への影響
支援政策による再生医療等製品の投与拡大に伴い、2035年には従来治療を行う場合と比較して医療費支出が約900億円増加する試算となっている。一方、再生医療エコシステムの発展や患者の再就労に伴う税収(法人税・所得税・住民税・消費税)および社会保険料収入は約1,000億円に達し、医療費支出の増加分を上回ることから、医療保険財政等の収支はプラスになると分析されている。

再生医療等製品は一般的に1回投与あたりの薬剤費用が高額であるものの、投与回数や治療期間の違いを考慮すると、医療費が必ずしも従来治療と比較して高額になるわけではないとしている。従来治療に対して財政負担が増加することなく、小児・若年層を含む年間約13,000人もの重篤な疾患に苦しむ患者が長期寛解や機能回復などを期待できる革新的治療を受けられる価値に鑑み、再生医療を推進する政策は社会にとって許容可能かつ意義深い取り組みであるとしている。

再生医療エコシステムの確立は、国民の健康増進に寄与するだけでなく、地方創生を含む経済的波及効果を日本国内にもたらし、経済安全保障強化にも貢献し得る。影響を最大化するためにはバリューチェーン横断的な支援が必要とされるが、本ホワイトペーパーでは、特に影響力が大きい商業化を支える政策を中核として位置づけ、優先的に支援を強化することを提案している。
なお、本ホワイトペーパーはブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(Bristol-Myers Squibb K.K.)の協賛により作成された。監修には、池田 俊也(国際医療福祉大学大学院 医学研究科 教授)、小黒 一正(法政大学経済学部 教授)、中村 洋(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 教授)、牧 兼充(早稲田大学大学院 経営管理研究科 准教授)が参加している。
- 会社名:アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社
- 日本代表:祖父江 謙介
- 本社所在地:東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター36階
- URL:https://www.adlittle.com/jp-ja
本記事はアーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社の発表をもとに作成。
ビジネスパーソンの課題解決と納得感にこだわるDellows News編集部。キャリア論からAI、健康法まで幅広い分野に対応し、複雑なテーマでも平易な言葉で丁寧に解説。読者が「明日から使える」知識やヒントを得られるよう、具体的な事例・データ・専門家の見解を交えて執筆。情報を整理し、納得感ある記事づくりを心がけています。



