Wikipedia三大文学の参考文献『死の貝』3刷決定

4月24日に新潮文庫から発売された『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』が、SNSや各メディアで大きな注目を集めている。本書は、Wikipedia三大文学の一つとして知られる「地方病(日本住血吸虫症)」の主要参考文献とされるノンフィクションだ。

25年以上前に出版され、長らく絶版だった幻の一冊が文庫化されるや、売れ行きは好調で、早くも3刷が決定した。文庫化に伴い新章が加えられるなど大幅に増補された本書には、生命科学者の仲野徹氏から「日本住血吸虫の研究と比較すると、医学の進歩というものがいかに素晴らしいかに刮目せざるをえない」との推薦コメントが寄せられている。

本書が扱う日本住血吸虫症とは、山梨県の甲府盆地や広島県の片山地方、福岡県と佐賀県の筑後川流域で発生していた謎の病だ。腹に水がたまって妊婦のように膨らみ、やがて動けなくなって死に至るこの病に、現地の人々は恐怖し、苦しんできた。原因や治療法が分からない中、医師や住民らが立ち向かい、未知の寄生虫が原因であることが判明。撲滅へ向けた取り組みが百年以上の時間をかけて続けられた。

著者の小林照幸氏は、ノンフィクション作家として知られ、『毒蛇』で第1回開高健賞奨励賞、『朱鷺の遺言』で第30回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。新型コロナウイルスで感染症の恐ろしさを誰もが経験した今、謎の病との闘いを追った本書は、多くの人に読まれるべき一冊といえるだろう。