世界87か国の15歳で孤独感が増加 女子の急増や家庭環境との関連が判明
経済協力開発機構(OECD)の調査データを活用した国際共同研究により、2000年から2022年にかけて世界87か国の15歳において、学校での孤独感が増加傾向にあることが分かりました。特に高所得国や上位中所得国では女子の孤独感が急増して男子を上回り、性別による格差が拡大しています。また、国の経済水準に関わらず、家庭の社会経済状況が低い生徒ほど一貫して孤独感が高い実態も示されました。

世界的な孤独感の増加と性差の拡大
研究では、OECDが実施する生徒の学習到達度調査(PISA)のデータ(87か国、215万5046人)を使用し、生徒の自己申告に基づく孤独感スコアを算出してマルチレベルメタ解析を実施しました。対象国は世界銀行の分類に基づき、「低・下位中所得国」「上位中所得国」「高所得国」の3群に分けて比較されています。
分析の結果、思春期世代の孤独感は2000年から2022年にかけて世界的に増加しており、特に2012年以降に顕著な上昇が確認されました。2000年時点では男子の方が孤独感が高い傾向にありましたが、高所得国では2012年頃、上位中所得国では2018年頃に女子の孤独感が男子を逆転し、性差の拡大が明らかになりました。
家庭の社会経済状況と孤独感の関連
調査対象となった国の経済水準に関わらず、家庭の社会経済状況が低い生徒ほど、学校での孤独感が一貫して高いことが示されました。この結果から、高所得国や上位中所得国において「経済的に不利な環境にある女子」が最も高い孤独感を抱えている状況が浮き彫りになっています。
思春期はライフコースの中でも孤独感を感じやすい時期とされ、近年ではメンタルヘルスや身体的健康、成人期以降の生活への悪影響が懸念されています。背景には、スマートフォンやSNSなどデジタル技術の普及をはじめとする社会的変化が対人コミュニケーションに影響を与えている可能性や、構造的な社会格差など複合的な要因の関与が考えられています。
今後の対策と研究体制
研究グループは、思春期の孤独感が個人の問題にとどまらず世界的に重要な公衆衛生課題であるとしており、個人のケアにとどまらない学校環境の整備や社会経済的に不利な生徒への支援など、包括的な公衆衛生・教育政策の推進が必要であるとしています。
本研究は、国立健康危機管理研究機構国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター細澤麻里子研究科長、順天堂大学大学院医学研究科小児思春期発達・病態学清水俊明教授(現在:名誉教授/客員教授)、同 国際教養学部野田愛教授、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センター西田淳志センター長、および英国キングス・カレッジ・ロンドンの国際共同研究グループによって実施されました。研究成果は、2026年10月16日付で英科学誌Psychological Medicineのオンライン版に掲載されています。
本研究に関する論文情報および助成情報は以下の通りです。
- 雑誌名:Psychological Medicine
- 題名:Global Trends in Adolescent School Loneliness from 2000 to 2022: An Analysis of Gender and Socioeconomic Inequalities Across 87 Countries
- 著者名:Mariko Hosozawa¶, Kenta Igami, Daniel Stanyon, Hadrien Charvat, Gemma Knowles, Atsushi Nishida, Toshiaki Shimizu, Ai Ikeda, Hiroyasu Iso(¶:責任著者)
- DOI:https://doi.org/10.1017/S0033291726105510
- 研究助成:日本学術振興会科学研究助成金事業(21K10487)、科学技術振興機構RISTEX社会技術研究開発センター(JPMJRS24K1)
本記事は順天堂大学などの共同研究グループによる発表をもとに作成しました。
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