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順天堂大学など、不老生物ヒドラ用いた老化解明の研究がJST-CRESTに採択

順天堂大学(学長:代田 浩之)は、科学技術振興機構(JST)が公募した「戦略的創造研究推進事業(CREST)」の「異分野融合による超生体組織の創製と新機能の創出」領域において、老化の本質的メカニズムの解明を目的とした研究課題に採択された。不老生物として知られる水生生物「ヒドラ」を用い、老化に必須となる遺伝子やメカニズムの探索を行うプロジェクトを開始する。研究は順天堂大学 大学院医学研究科の洲崎 悦生主任教授を研究代表者とし、慶應義塾大学、大阪大学、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)が共同で取り組む。

老化しない水生生物ヒドラに着目した背景

老化のメカニズムにおいて、「なぜ、どのように個体が老いるのか」という本質はいまだ十分に解明されていない。マウスや線虫などを用いる従来の老化研究は、老化を早めたり遅らせたりする方法が中心であり、調べている要因が老化の根本原因なのか、進行中の老化過程を修飾しているだけなのかを区別することが困難であった。

そこで研究チームは、老化しない生物である淡水性刺胞動物「ヒドラ」に着目した。老化しないヒドラに老化に関わる候補因子を人工的に加えて老化を「再構成」できれば、その因子が老化を引き起こす十分な要因であることを直接示せるという。ヒドラは、長期の観察において年齢とともに死亡率が上がる現象(個体老化現象)が見られないことや、近縁種の中に低温などの環境変化によって老化のような変化を示す種が存在すること、全身が約5〜10万個の細胞で構成されすべての細胞を解析できること、細胞を解離させても集約することで個体として再生することなどの特徴を持つ。

推進される3つの研究アプローチ

本プロジェクトでは、以下の3つのアプローチを連携させて推進する。

  1. 老化を再現する「切り口」の探索:老化しないヒドラと老化するヒドラのゲノムや細胞の構成を比較し、老化の鍵となる遺伝子や細胞の候補を絞り込む。
  2. ヒドラを操作する技術の開発:遺伝子を導入・改変する技術と、3Dバイオプリンターを用いて細胞の種類・数・配置を人工的に組み替える技術を開発し、老化を再現した「超生体ヒドラ」を作製する。
  3. 老化を測定する技術の開発:多数のヒドラを1匹ずつ自動で飼育・観察して生存率の推移を記録する装置「Hydra-hive」と、ヒドラ全身の全細胞を3次元で解析する技術「Hydrascopy」を開発する。

予備的な成果として、老化しないヒドラの染色体レベルのゲノム解読に成功しており、老化との関わりが知られる「Klotho(クロトー)遺伝子」などが欠損していることやエネルギー代謝の特徴を明らかにしている(Genome Biology and Evolution誌、2026年8月掲載)。

期待される今後の展開と応用

老化を引き起こすのに十分な因子や細胞が見つかれば、老化の仕組みの理解が進むとされている。ヒドラで発見された因子を老化する生物で制御することで老化が抑えられるかも検証し、種を超えた共通の老化要因であるかを検証する方針だ。現在の課題であるヒドラに対する遺伝子操作技術の未確立に対しては、複数の遺伝子導入方法や細胞組み替え手法を並行して進めることで克服を目指す。

本研究の成果は、ヒトの抗老化医療や健康寿命の延伸に新たな知見をもたらすものと期待されている。開発される飼育・観察装置や全細胞解析技術は幅広い研究分野へ応用可能であるほか、ヒドラの不老性と再生能力を活かして、半永久的に駆動・自己修復を行う環境モニタリング用センサーなど、材料システムの開発も視野に入れて進められる予定である。

採択課題の概要

  • プログラム名:科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(JST-CREST)
  • 研究領域:異分野融合による超生体組織の創製と新機能の創出(研究総括:秋吉一成・京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 特定拠点教授)
  • 研究課題名:不老生物ヒドラの「超生体」化:個体老化再構成と老化始原探索
  • 研究代表者:洲崎 悦生(順天堂大学 大学院医学研究科 主任教授)
  • 研究期間:2026年10月 ~ 2032年3月 (5.5年間)

本記事は順天堂大学の発表をもとに作成。

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