大王製紙、CNF複合樹脂の商用化へ

大王製紙は、NEDOの「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」事業において、セルロースナノファイバー(CNF)の製造コスト低減を目的とした製造プロセスを開発した。この製造プロセスを用いたCNF複合樹脂「ELLEX-R67」は、2024年4月に愛媛県四国中央市の回覧板の材料に初めて採用された。

大王製紙は、「ELLEX-R67」の商用プラントの設置を決定し、2025年度に年産2000トン規模の設備を三島工場に構築する予定だ。これにより、自動車部材や家電製品など、さまざまな用途展開に対応できる品質、供給量、コスト水準でCNF複合樹脂の供給が可能となり、市場の期待への対応とCNF事業の拡大が見込まれる。

CNFは、植物素材であり、自然界に存在する再生可能な資源だ。CNF複合樹脂は、CNFの軽くて強い特性を生かすことができ、自動車部材や家電製品への用途展開が期待されている。大王製紙は、複合樹脂中のセルロース高濃度化へのニーズに応えるため、CNF複合樹脂のセルロース濃度を55%から67%へ高めることに成功した。

「ELLEX-R67」は、部分的にCNF化したセルロースを67%含む高濃度ペレットであり、樹脂材料設計の自由度が高く、ユーザーが混練・成形加工しやすい仕様となっている。また、CNFが植物由来であることや繊維が破断しにくいことから、減プラスチックやマテリアルリサイクルも期待できる素材だ。

大王製紙は、2013年にCNF水分散液のサンプル提供を開始して以降、多様なユーザーニーズに対応できるラインアップの拡充とコスト低減のためのパイロットプラントによる製造プロセス開発を進めてきた。今回の商用プラント設置により、さまざまな用途展開に対応できる品質、供給量、コスト水準でCNF複合樹脂を供給することが可能となる。

今後、大王製紙は、軽量化、マテリアルリサイクル、植物由来などのCNFの優位性を生かせる自動車部材としての利用拡大を目指して、素材供給量を増大し、ユーザーと連携して大型部材試作などの評価を進めていく計画だ。自動車部材、家電製品、建材、容器・包装などの分野での用途展開を積極的に進めていくとしている。