岡山大学、高性能な熱電変換材料「n型カーボンナノチューブ糸」の作製に成功

岡山大学の研究チームは、工場や車体の排熱を電気に変換できる高性能な熱電変換材料「n型カーボンナノチューブ糸」の作製に成功したと発表した。

カーボンナノチューブ(CNT)を無数に束ねた糸状の材料「CNT紡績糸」を高結晶化する通電加熱処理とn型ドーピングのプロセスを開発することで、低温域(150℃以下)での高い熱電変換性能を実現した。

CNT紡績糸は超軽量でフレキシブル性や人体適合性を持ち、低温域で熱電変換が可能なことから、次世代のInternet of Everything(IoE)デバイスへの応用や宇宙ステーションなどの極限環境での利用が期待できる。

研究チームは、CNT紡績糸を高結晶化し、効率的に半導体材料中の自由電子の数を増加させるn型ドーピングを行う手法を開発。この手法を用いて、π型の熱電変換モジュールの作製と低温域動作に成功した。

低温で動作する熱電変換素子は、工場や車体の排熱、人体の熱などの未利用の低温排熱を有効活用するエネルギーハーベスティング技術に必要不可欠だ。これまでは無機材料が検討されてきたが、毒性や加工性、柔軟性の低さが問題となっていた。

今回の研究成果により、IoEシステムの高度化や熱電変換素子の応用範囲の拡大と普及に大きく寄与することが期待される。

本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(B)(JP21H01371)の支援を受けて実施された。研究成果は2024年3月12日に学術雑誌「Small Methods」に掲載された。