熊本の過疎村で挑む農業ビジネスと脱炭素への道
熊本県球磨郡山江村に本社を置く株式会社のらは、自社の農作物を「のらしごと人」というブランド名で広く知ってもらうため、公式ウェブサイトとショップサイトを開設した。YouTubeやSNSでも生産や収穫などの活動を積極的に発信している。
同社は、元々自営農家を営んでいた3人の共同創業者が、首輪をつけずに放し飼いされる「のら犬」のような自由さと野性味を感じ、それが当初3人ピッタリと合致したことから設立された。主に唐辛子、キクラゲ、甘長トウガラシ、やまえ栗の栽培に取り組んでいる。
山江村は九州の中山間地域に位置し、人口は3,000人余り。農耕面積は全体のわずか4%しかない。そのため、同社では限られた土地で管理しやすく、利益を追求しやすい作物を選定して生産・販売している。販売ルートは、個人向けネット販売に加えて、県内外の飲食店や製菓店への直接卸し販売や法人向け販売にもシフトしている。これにより利益を拡大し、山江村内での若者の雇用創出につなげたいとしている。
山江村の特産品である「やまえ栗」は、昭和天皇献上栗としても知られ、当時は生産量が100トンを超えていたが、高齢化や過疎化、栗の老木化もあり現在は3分の1程度の収穫量となっている。しかし、今年4月には地理的表示保護制度(GI認証)を取得。同社でもやまえ栗の生産及び販売準備に取り組んでいる。
また、山江村現村長が令和4年12月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行ったこともあり、同社も積極的に脱炭素化に取り組んでいる。もみ殻や栗の剪定枝、イガ、キクラゲの菌床などの農業廃棄物を活用した「バイオ炭」や「水田における中干し期間延長」など、農業分野での脱炭素化を目指し、環境保護と新たな付加価値創出に努めている。
過疎化と高齢化が加速する中、「九州で最も知られていない村」と言われる山江村で、株式会社のらが農業ビジネスとカーボンニュートラル実現への挑戦を続けている。