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沖縄県名護市で民間救急による転院搬送実証が開始 消防と医師の管理体制は全国初

沖縄県名護市は2026年10月1日、民間救急が病院間の転院搬送を担う「官民連携型救急搬送体制実証事業」の運行を開始しました。運行は愛知県名古屋市に本社を置くフィルタス株式会社が担い、名護市消防本部による運用管理と同社が医師とともに整備したメディカルコントロール体制のもとで搬送の質を担保します。一般社団法人OPHISの調査(2026年9月時点)によると、この二つの管理のもとで民間救急を自治体の救急医療体制に組み込む仕組みは全国初となります。

事業の概要と運行体制

本事業は名護市(名護市消防本部)を事業主体とする実証事業で、2026年6月に内閣府の令和8年度北部振興事業に採択されました。対象となるのは、名護市内の医療機関から沖縄県内の医療機関へ転院する患者、または離島からヘリコプターで名護市内のヘリポート等に運ばれ医療機関へ搬送する患者の2種類です。いずれも医師が転院を必要と判断し、搬送中に救急救命士による観察等が必要と認めた患者に限り、緊急性が極めて高い患者はこれまでどおり消防救急車が対応します。

運行体制は車両1台で、民間救急の専門スタッフ2名体制(救急救命士の有資格者を含む)で運行します。受付時間は年中無休の8:30〜20:00ですが、沖縄県中部への搬送は18:30、南部は18:00までとなっています。医療機関からフィルタス社の専用窓口へ直接依頼を行う仕組みです。東京都世田谷区に拠点を置く一般社団法人OPHISは、所属メンバーが総務省「地域活性化起業人」として名護市消防本部に入り、2025年4月から本事業の設計や準備を支援してきました。

救急出動の増加と民間救急活用の背景

総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」によると、2024年の救急出動件数は771万件を超えて3年連続で過去最多となり、転院搬送は前年比4.6%増の58万1,928件でした。一刻を争わない転院搬送を消防救急車が担ってきた実態を受け、2025年6月には総務省消防庁と厚生労働省が通知を9年ぶりに改訂し、緊急性の乏しい転院搬送に民間事業者や病院救急車を活用するよう求めています。2026年度の診療報酬改定でも、救急自動車以外を用いた転院搬送が評価の対象に加わりました。

沖縄県北部は消防の管轄面積が広く離島を抱えている一方、救急病院は名護市内の2施設に限られます。救命救急センターが中部・南部にあるため専門的な治療のための転院搬送が日常的に発生しており、名護市消防本部では2023年に全救急出動の約11%を転院搬送が占め、同年の全国平均(7.3%)の約1.5倍に達していました。さらに2028年度には公立沖縄北部医療センターの開院が予定されており、持続可能な転院搬送体制の構築が求められていました。

質を担保するメディカルコントロール体制

本事業の特徴は、市が民間救急に業務を委託して地域の救急医療体制に組み込む点にあります。医療機関は救急救命士の同乗が必要な転院搬送を消防救急車や自院車両以外に依頼できるようになり、消防救急車を緊急性の高い事案へ優先させ、現場到着の遅れを防ぐことを目指します。

搬送の質を担保するため、医師が救急救命士の活動に指示・助言を行い、事後検証や教育を通じて活動の質を医学的に保障するメディカルコントロール体制をフィルタス株式会社が医師とともに整備しました。名護市消防本部が研修等を通じて運用を管理し、搬送中に容態が急変した際は119番通報により消防へ引き継ぎます。名護市消防本部の照屋 貢消防長は、市民が必要なときに救急車を利用できる体制を守り、安全な運行を支えていく考えを示しています。また、フィルタス株式会社の相川 なほ子代表取締役は、救急救命士の専門性を地域医療を支える力へ広げ、持続可能な仕組みづくりに挑戦すると述べています。

今後の検証と展開

実証事業では、初期段階で医療機関の利用状況や転院搬送の所要時間、消防救急車と民間救急の稼働状況を測定します。最終的にはデータを蓄積し、市内の救急事案における消防救急車の現場到着時間への効果を検証する計画です。

名護市での実証を起点として、2027年度以降は沖縄県北部の他地域への展開が検討されています。一般社団法人OPHISの匂坂 量代表理事は、消防と医師による管理のもとで質を担保する取り組みの成果を検証し、全国の地域に展開できるモデルへ発展させていく姿勢を示しました。同法人は実証結果と設計プロセスを、同様の課題を抱える自治体や消防本部へ公開していく予定です。

団体概要

  • 団体名:一般社団法人OPHIS
  • 代表理事:匂坂 量
  • 設立日:2024年1月
  • 所在地:〒156-0043 東京都世田谷区松原3丁目27番10号
  • ホームページ:https://ophis-ems.org

本記事は一般社団法人OPHISの発表をもとに作成しました。

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