SAJの研究会、個人所得申告のデジタル化に向けた提言と英国の調査報告書を発表
一般社団法人ソフトウェア協会(SAJ)政策・法務知財委員会の「社会的システム・デジタル化研究会」(通称: Born Digital研究会)は、「デジタル化による個人所得申告の新しいあり方に向けた提言」および「調査報告書:イギリスにおける税務のデジタル化」を発表しました。同研究会には、クラウド基幹業務システム『PCA Arch』を開発・販売するピー・シー・エー株式会社(PCA)を含むソフトウェアベンダー等8社が参加しています。日本の個人所得申告に関する仕組みを、デジタルを前提とした社会的システムとして再設計することを目指す内容となっています。
提言策定の背景と狙い
確定申告や年末調整など、日本における個人所得申告に関する社会的システムの多くがいまだ紙を前提とした年次処理の構造を残しているという課題意識から本提言が策定されました。電子申告や行政手続APIの普及により「電子化」は進んでいるものの、業務プロセス全体を組み替え最適化する「デジタル化」には至っていないと指摘されています。特に年末調整業務には、社会全体で年間約1,000億円から3,000億円規模のコストが投じられていると試算されています。
提言では、年末調整・確定申告・給与支払報告・住民税・社会保険・給付等を個別最適で見直すのではなく、所得情報を起点とする一連の社会的システムとして再設計することを提言しています。
申告の簡易化と情報基盤の整備
提言では、年末調整を確定申告の「簡易版」として再定義し、対象者や控除の絞り込み等による徹底的な簡易化を図ることを提案しています。あわせて、現在は年1回の給与支払報告を月1回のデジタル報告へとリアルタイム化し、所得税・住民税・社会保険・労働保険・公的統計にまたがる事業者報告のワンスオンリー化を目指すべきとしています。住民税の現年課税化に向けた継続的な検討も提案されました。
また、給与所得、事業所得や控除等の情報を本人が確認できる形で集約・蓄積する個人所得情報基盤の整備を提案しています。これにより、将来的には申告を必要とする個人がワンクリックで確定申告を完了できる状態を目指すほか、所得に応じた給付、税額控除、緊急時支援等にも活用し得るものとしています。さらに、デジタル・プラットフォーム事業者を通じた取引データの集約やAPI連携等により、個人事業主や副業層の申告・納税負担を軽減することも盛り込まれました。
提言の策定にあたり、給与支払報告のリアルタイム化(Real Time Information: RTI)や記帳・申告プロセスのデジタル化(Making Tax Digital: MTD)などを進めてきたイギリスにおいて、HMRC(イギリス歳入関税庁)、ソフトウェアベンダー、会計・税務専門家への現地ヒアリングが実施され、その結果が調査報告書として公開されました。
報告書では、RTIがUniversal Creditやコロナ禍の雇用維持給付(CJRS)にも活用されたことや、MTD for VATとMTD for Income Taxにおける改革の受容性の違い、義務化が予定されているデジタルインボイスの位置付けなどを整理しています。イギリスでの経験から、改革には既存プロセスの変更度合いや追加費用の規模が影響することや、明確なロードマップとステークホルダーによる「共創(Co-creation)」が不可欠であることが示されています。
- 社名:ピー・シー・エー株式会社
- 所在地:東京都千代田区富士見1-2-21 PCAビル
- 代表取締役社長:玉井 史郎
- 設立:1980年8月1日
- 資本金:8億9040万円
- 企業URL:https://pca.jp/
本記事はピー・シー・エー株式会社の発表をもとに作成しています。
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