マッキンゼーが新レポート発表 2040年までに約1.7兆ドルの追加収益試算
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、日本が新たな時代において競争力を再構築し、停滞から成長へと転じるための論点を提示する最新レポート「新時代の日本へ:躍動と成長に向けた競争力の再構築」の日本語版を発表しました。本レポートでは、構造変化が進むなかで成長を取り戻すため、一人当たり生産性の向上と企業のダイナミズムの回復が不可欠であると指摘しています。主要な成長領域で高いパフォーマンスを実現できれば、2040年までに約1.7兆ドルの追加収益を生み出す可能性があると試算しています。
直面する5つの構造変化と生産性の課題
1990年代以降、日本の一人当たりGDP(購買力平価ベース)の成長率は約30%にとどまっています。地政学的不確実性、AIによる変革、人口減少、資源競争、資本コストの上昇という5つの構造変化が進む中、日本には従来の漸進的な改善を超えた対応が求められています。
Fortune Global 500に名を連ねる日本企業は1995年の149社から現在38社に減少しました。また、日本の労働時間当たり生産性は他の先進国と概ね同水準で成長する一方、マッキンゼーが分析した日本企業約10,500社の2019年から2023年の純生産性成長率は実質ゼロにとどまっています。人口減少下で成長を実現するには、高生産性企業を増やし、人材や資本を成長領域へ再配分することが重要とされています。
日本企業の成長に向けた5つの「シフト」
本レポートでは、日本企業が新たな時代に成長と競争力を取り戻すため、従来の延長線上での改善にとどまらず、企業の競争や価値創造のあり方そのものを転換する必要があると指摘し、以下の5つの「シフト」を提示しています。

- 業界再編を通じた戦略的自律性の確立:業界再編を通じ、グローバルなバリューチェーンで代替困難なポジションを確立する
- システム全体をリードする企業への進化:製品単体の提供から、AIやデータも活用してシステム全体の価値を提供する企業へ進化する
- 企業エコシステム全体の生産性を引き上げる:大企業だけでなく、中小企業やサプライヤーを含む企業エコシステム全体の生産性を高める
- 新時代の課題解決型のスタートアップ育成環境の構築:人口減少や高齢化など日本が先行して直面する社会課題を起点に、世界で成長できるスタートアップを生み出す
- 新陳代謝と長期的価値創造を両立するガバナンス:事業の新陳代謝を促しながら、将来の競争力につながる領域への長期投資を可能にするガバナンスを構築する
日本の強みを生かす成長領域と収益創出の可能性
世界的な成長性、日本の競争力、国益上の重要性という3つの視点からの分析では、日本が強みを持つ半導体、バッテリー、ロボティクス/フィジカルAI、原子力などでは既存の強みをさらに拡張し、AI、クラウド、サイバーセキュリティなどでは能力構築を加速する必要性を示しています。

日本が高成長領域における競争力を高め、より多くのグローバル競争力を持つ企業を生み出すことができれば、2040年までに約1.7兆ドルの新たな企業収益を創出できる可能性があるとしています。その実現に向けては、企業による戦略的な資源配分に加え、成長を支えるインフラや制度、人材などの構造的な変化も重要となります。

日本代表の岩谷直幸は、「本レポートでは日本企業の生産性の伸びへの寄与と、世界の成長領域における競争基盤を、具体的なデータで捉えました。この分析で重視しているのは企業の成長や大胆な転換を経済全体の成果にどうつなげるかです。」と述べています。
なお、本レポートは岩谷直幸(日本代表、シニアパートナー、東京オフィス)、ソン・ジョンミン(パートナー、マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)、柿元雄太郎(シニアパートナー、関西オフィス)、瓜生田義貴(パートナー、東京オフィス)が執筆しました。
本記事はマッキンゼー・アンド・カンパニーの発表をもとに作成されています。
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