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徳島大学、ALS早期診断に向け顎二腹筋前腹を用いる新たな針筋電図検査手法を開発

徳島大学病院脳神経内科の福本竜也特任助教、和泉唯信教授らの研究グループは、難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脳幹領域における診断能を改善する新しい針筋電図検査手法を開発しました。下顎の表層を走行する顎二腹筋前腹(ABDM)を検査対象とすることで、痛みを大幅に和らげ、安定した評価と高感度な異常所見の検出を可能にしています。本研究成果は、2026年7月21日に国際的な専門誌『Muscle & Nerve』のオンライン版に掲載されました。

従来の脳幹領域における検査の課題

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、全身の運動神経が進行性に障害されることで筋力低下や構音障害、嚥下障害、呼吸障害などを引き起こす難治性疾患です。確実な診断には、脳幹、頸髄、胸髄、腰仙髄の複数領域において、針筋電図検査により運動神経の脱神経変化を証明することが、Awaji基準(2008年)やGold Coast基準(2020年)などの国際的な診断基準で求められています。

しかし、脳幹領域における針筋電図検査は技術的に困難とされてきました。従来標準的に穿刺対象とされてきたオトガイ舌筋(舌筋)は、強い痛みを伴うほか、患者が口や舌の力を意識的に完全に抜くことが難しく、診断の指標となる線維束性収縮電位(FP)などの異常な電気活動をノイズなしで高感度に検出することが妨げられていました。また、代替として選択される僧帽筋は厳密には脳幹領域の筋ではないため、診断の不確実さが残る課題がありました。

顎二腹筋前腹に着目した比較検証

研究グループは、下顎の体表近くに存在する顎二腹筋前腹(ABDM)に着目しました。ABDMは三叉神経に支配される純粋な脳幹領域の筋肉であり、下顎の皮膚下にあってアプローチが容易とされています。

研究では、徳島大学病院を受診したALSの疑いのある患者を対象に非盲検試験および前向き観察研究を実施しました。最終的にALSと確定診断された27名(平均年齢70.8歳、発症からの期間中央値9ヶ月)を対象として、ABDM、舌筋、咬筋、僧帽筋の4つの筋肉の間で、検査時の安静維持の容易さ、FPの検出率、痛みの度合いを比較検証しました。

高い安静度の維持と異常所見の検出感度

針筋電図検査で線維束性収縮電位(FP)を正確に判定するには、完全に力が抜けた完全安静状態が必要です。従来の舌筋では完全安静が得られた割合が7%にとどまりましたが、ABDMでは85%という高い頻度で完全安静を達成し、正確な波形の評価が可能であることが示されました。

また、早期病変指標である線維束性収縮電位(FP)の検出率は、舌筋の0%に対し、ABDMでは52%に達しました。安静時異常活動や慢性脱神経電位、およびその両者の検出頻度もABDMで高い傾向が示されています。さらに、従来の対象筋の検査のみでは初診時に診断基準を満たさなかった3名(全体の11%)において、ABDMの所見を追加することで診断基準を充足させることができました。

患者負担の軽減と早期治療への期待

ABDMは検査に伴う疼痛が最も少なく、検査時の患者負担を軽減できることが示されました。本手法により、体への負担を抑えながら早期病変を捉え、ALSの早期確定診断と迅速な治療介入につながることが期待されています。

なお、本研究は厚生労働省難治性疾患克服研究事業「MHLW Research on rare and intractable diseases program」(助成番号:JPMH23FC1008)の支援を受けて実施されました。

本記事は国立大学法人徳島大学の発表をもとに作成されました。

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