千葉大など、神経性過食症の認知行動療法前後の脳機能を世界で初めて解析
千葉大学社会精神保健教育研究センターの須藤佑輔特任助教や同大子どものこころの発達教育研究センターの平野好幸教授らの研究チームは、神経性過食症に対する認知行動療法(CBT)前後の脳機能を世界で初めて縦断的に解析しました。全国6機関との共同研究により実施されたもので、CBTの治療効果が安静時脳機能の変化と関連している可能性や、治療前に特定の脳機能が保たれているほど効果が得られやすい可能性が示されました。研究成果は2026年9月15日(現地時間)に学術誌Journal of Eating Disordersで公開されています。
研究の背景と課題

神経性過食症は、過食と体重増加を防ぐための嘔吐や下剤乱用などを繰り返す摂食症です。生涯有病率は特に女性で2%と高く、体型や体重への強いこだわりや制御困難な過食・代償行動によって生活の質が大きく損なわれます。
第一選択の治療法としてCBTが用いられていますが、症状が消失して診断基準を満たさなくなるほど回復する患者の割合は30-50%に留まっています。CBTの改良に向けては、治療効果がどのような脳機能の変化によってもたらされているのかという治療メカニズムや、どのような症例で効果が得られやすいのかという治療反応予測の解明が求められていましたが、これまでCBTの前後で縦断的に脳機能の変化を解析する研究は行われていませんでした。
脳機能解析により判明した成果
研究チームは、神経性過食症に対するCBTの前後でfMRI(核磁気共鳴機能画像法)を実施し、全脳142領域間の安静時機能的結合性(rsFC)の変化を網羅的に調査しました。これにより、どのrsFCの変化がCBTの効果(摂食障害診断質問紙であるEDE-Q得点の改善度)と関係しているかを検証しました。
解析の結果、CBTの効果は4領域間のrsFCの変化(眼窩前頭皮質と縁上回間のrsFC低下、側頭紡錘状間と小脳半球~小脳虫部間のrsFC増加等)と相関していることが判明しました。また、治療前に中心前回~下側頭回や上頭頂小葉~下前頭回のrsFCが強いほど、CBTの効果が得られやすい傾向があることも示されました。
今後の展望
研究チームは、今回の成果によりCBTの治療効果が物事の報酬評価や衝動制御、視覚処理に関わる安静時脳機能の変化と関連していることや、治療前に身体の知覚や思考のコントロールに関わる脳機能ネットワークが強いほど治療効果が得られやすい可能性が示されたとしています。
これらの知見は、CBTが患者の脳機能に与える影響や治療効果を高めるための準備を検討する手掛かりとなり、神経性過食症に対するCBTプログラムの改良に有用な基礎的知見となることが期待されています。
論文情報と研究体制
本研究の論文情報および参画機関、支援プロジェクトは以下の通りです。
- 論文タイトル:Resting-State Functional Connectivity Changes and Pretreatment Features Associated with Symptom Improvement after Cognitive Behavioral Therapy for Bulimia Nervosa
- 雑誌名:Journal of Eating Disorders
- DOI:10.1186/s40337-026-01754-z
- 共同研究機関(全国6機関):東北大学病院心療内科、国立精神・神経医療研究センター、東京大学医学部附属病院 心療内科、京都大学医学部附属病院精神科神経科、九州大学病院 心療内科、産業医科大学病院 脳神経内科・心療内科
- 支援事業:JSPS科学研究費助成事業(JP 24K06519, JP 23K22256)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(JP19dm0307104, 事業名:戦略的国際脳科学研究推進プログラム、研究開発課題名:摂食障害に対する認知行動療法の有効性の神経科学的エビデンスの創出)
本記事は千葉大学の発表をもとに作成されています。
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