土地の記憶に向き合う吉野祥太郎、富山で個展「Mythology −土地の記憶−」開催
吉野祥太郎の個展「Mythology −土地の記憶−」が、2024年9月21日から2025年3月16日まで、富山県の下山芸術の森 発電所美術館で開催される。
吉野は、「土地の記憶」をテーマに、大地や自然環境の変遷といった土自体に宿る記憶を、大規模なインスタレーションや立体作品で表現してきた。特に、土を立てることで記憶の層を表現する「その土地の記憶を汲む[Draw the History of the Ground]」シリーズは、国内外の各地で発表されている。近年では、水やミラーフィルムを用いることで、より有機的で流動的な作品世界を構築し、鑑賞者を土地だけでなく内面世界の記憶へと誘っている。
今回の展覧会では、発電所美術館が過去に動力としてきた水をモチーフに、富山の土地や個人の深層、そして異次元空間といった多様な記憶へと接続する、壮大な新作インスタレーションを発表する。作品によって新たに編み直される記憶は、神話(Mythology)として鑑賞者一人ひとりに語り継がれるだろう。
吉野は、「かつて水力発電所であった場所の記憶が、水面に揺らめく光のように蘇る。ミラーフィルムがつくり出す光は過去と現在、そして鑑賞者の心に眠る記憶を映し出し、また空間に設置されたブランコは、時間軸を超越する異次元の旅へと揺れるたびに鑑賞者を導き、記憶と場所との繊細な対話を誘起する」とコメントしている。
キュレーターの田尾圭一郎は、「本来はその土地の民俗や歴史を象徴するナラティブとして存在する”神話”を、吉野は実に現在的な生命体として表現する。水と光、鑑賞者が作品を写し鏡に変容し続けるジェラティブな空間は、いまこの場が神話となり得ることを、そして神話もまた有機的であることを提示しようとしている。人間至上主義がほつれを見せ、自然との共生やレジリエンスが問われる現代社会における神話とは、かくあるのかもしれない」と述べている。
また、10月5日には東京の小平シルバー荘アトリエ(仮)にて、吉野によるトークイベントが開催される予定だ。