A.T. カーニーが半導体供給網の安全性確保に向けた論考を公開
A.T. カーニー株式会社は、論考『米国の半導体サプライチェーンの安全性確保』(英題:Securing the US semiconductor supply chain)を公開しました。本論考では、米国の半導体サプライチェーンの安全性を高めるための2つの技術的手法と、米国へ向けた6つの施策が提示されています。書類やラベルの確認にとどまらず、半導体そのものに基づく識別情報を検証することで、偽造品や改ざん部品の混入リスクを低減する仕組みを提案しています。
多層化する供給網とハードウェア・トロイの木馬のリスク
半導体は、設計、製造、組立・検査、流通から機器への組み込みに至るまで、多くの企業や国・地域を経由します。複数チップを1つのパッケージにまとめる技術の普及や代替部品調達の影響により、製品メーカーが個々のチップの製造元や流通履歴を把握することは難しくなっています。
論考では、特定の条件下で不正な動作を引き起こす改変「ハードウェア・トロイの木馬」を取り上げています。その主な影響として、機能不全・性能低下、情報漏えいにつながるセキュリティ上の脆弱性、出力の改変という3つの形態が挙げられています。一般的な生産試験ではチップ内部のあらゆる状態を網羅的に確認することが難しく、まれな条件で生じる異常を検出しきれない場合があります。
こうしたリスクは先端半導体だけでなく、低価格のアナログ部品や汎用部品にも存在します。AIやデータセンター、自動車、医療、エネルギー、防衛などの重要システムを守るため、用途や障害発生時の影響を踏まえた追跡・検証の仕組みが必要です。
ECIDとPUFを活用した個体識別と検証手法

論考では、部品の特性に応じて使い分ける2つの技術的手法が示されています。
- 電子チップID(ECID):チップに記録された識別情報を製造者が保有する工場やロットなどの記録と結び付け、デジタル署名付きバーコードと抜き取り部品のECIDを照合して検証する手法
- PUF:製造時に生じる微細なばらつきを個体固有の「指紋」として利用する技術。部品構造やインターフェースに応じ、チップ内部またはパッケージの特徴を識別に活用する手法
ただし、外部・パッケージPUFは内部のチップ自体の真正性を証明するものではないため、適用範囲を理解して使う必要があります。導入時は既存の製造・検査記録や業務システムを活用し、部品引き渡しごとに識別情報を記録・確認することで、同一識別情報が異なる場所で同時に検出されるといった異常を把握し、不審な部品の隔離や調査につなげます。
技術導入をサプライチェーン全体へ広げる施策として、以下の提言が示されています。
- 対象製品への半導体部品表(S-BOM)の義務化
- 重要度に応じた段階的導入
- 業界との協働
- 引き渡し・保管履歴の管理
- 検証と連動した関税インセンティブ(検証済みのS-BOMや識別確認、承認された信頼できる地域での製造などを条件に、米国の通商拡大法232条に基づく関税を軽減する仕組み)
- 日本を含む関係国・地域との識別情報形式や検証方法の共通化による、国際的な相互運用性の確保
論考および監修者情報
論考の概要および監修者は以下の通りです。
- 論考名:『米国の半導体サプライチェーンの安全性確保』(英題:Securing the US semiconductor supply chain)
- URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/securing-the-us-semiconductor-supply-chain
- 監修者:西川 覚也(シニアパートナー)、竹井 潔(プリンシパル)
本記事はA.T. カーニー株式会社の発表をもとに作成しました。
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