肺高血圧症で血管を守る防御因子を発見 吸入療法など新治療法開発に期待
東京医科大学と岡山大学などの共同研究グループは、難治性疾患である特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)において、肺動脈にかかる高い圧力によって分泌される「Stanniocalcin-1(STC1)」が細胞の異常な増殖を抑えることを明らかにしました。本研究成果は、2026年9月9日に国際雑誌「Circulation Research」に掲載されました。高い肺動脈圧が病態を悪化させるだけでなく肺血管を守る保護的な反応も引き起こすことを示したもので、新たな治療法の開発につながることが期待されます。
高い肺動脈圧に応答する防御反応を解明
特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)は、肺動脈を構成する細胞が異常に増殖して血管が狭くなり、肺動脈の血圧が上昇する難治性疾患です。心臓に大きな負担がかかり、進行すると心不全や酸素供給の低下を引き起こします。
従来、高い肺動脈圧は病態を悪化させる要因と考えられていましたが、肺血管の細胞が圧力を感知してどのような防御反応を示すのかは分かっていませんでした。東京医科大学細胞生理学分野の横山詩子主任教授や呼吸器内科学分野の小神真梨子助教、岡山大学医学部の中村一文客員研究員(島根大学医学部教授)らの研究グループは、このメカニズムの解明に取り組みました。

加圧培養システムとモデルマウスによる検証

研究グループは独自に開発した加圧培養システムを用い、IPAH患者由来の肺動脈平滑筋細胞に周期的な圧力を加えました。その結果、細胞が機械刺激受容体PIEZO1を介して圧力を感知し、HIF-1αを活性化させることでSTC1の産生を増加させることを発見しました。STC1は細胞周期の進行を抑え、細胞の異常な増殖を抑制します。
さらに、肺高血圧症のモデルマウスを用いた実験では、STC1を欠損させると病態が悪化する一方、STC1を気道内から投与すると病態が改善することが確認されました。これにより、STC1が高い圧力に応答して産生され、肺血管を病的な変化から守る防御因子として機能することが示されました。
新たな治療戦略への期待と論文情報
研究グループは、STC1の吸入療法が肺高血圧症に対する新たな治療戦略になりえるとしており、血管保護的な働きを利用した新規治療法の開発が期待されます。
発表された論文の詳細は以下の通りです。
- 論文タイトル:Mechanosensitive Stanniocalcin-1 Suppresses Pulmonary Artery Smooth Muscle Cell Proliferation and Attenuates Experimental Pulmonary Hypertension
- 著者名:Mariko Kogami, Yuko Kato, Satoko Ito, Keiko Uchida, Hana Inoue, Yuko Hidaka, Shota Tanifuji, Mayumi Yokotsuka, Yoshinari Yamamoto, Toshitaka Nagao, Shinji Abe, Roger R. Reddel, Kazufumi Nakamura, Utako Yokoyama*(*:責任著者)
- 掲載誌:Circulation Research
- DOI:10.1161/CIRCRESAHA.125.327869
本記事は国立大学法人岡山大学および学校法人東京医科大学の発表をもとに作成しました。



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