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順天堂大など、高齢心不全患者の退院後機能低下を予測するAIモデルを開発

順天堂大学保健医療学部理学療法学科の山田莞爾 助教、高橋哲也 教授、医学部循環器内科学講座の鍵山暢之 准教授らと日本循環器理学療法学会の研究グループは、高齢心不全患者が退院後1年の時点で機能的自立を失うリスクを予測する機械学習モデルを開発しました。国内の大規模な多施設共同前向き研究のデータを用い、退院時の客観的な身体機能データなどから高精度な予測を実現しています。本研究成果は『Journal of Cardiac Failure』オンライン版に2026年8月20日付で公開されました。

背景と統計的課題

心不全患者の高齢化に伴い、退院後に自立した生活を維持できるかどうかは生命予後と並ぶ重要な問題となっています。しかし、従来の予後予測研究の多くは死亡や再入院に主眼を置いており、退院後の要介護化を予測する手法は十分に確立されていませんでした。

高齢の心不全患者ではフレイルなど複数の要因が複雑に絡み合うため、機械学習(AI)の活用が期待されていました。一方で、身体機能の低下を観察する前に死亡に至る競合リスクが存在し、統計的に両者を偏りなく予測することが課題となっていました。

77項目のデータを機械学習で解析

研究グループは、国内96施設が参加する多施設共同前向き研究「J-Proof HF Registry」に登録された心不全患者のうち、入院前は自立していた65歳以上の6,382人(95施設)のデータを解析しました。

臨床情報に加え、理学療法士が退院時に測定したバーセルインデックス(BI)やSPPB(Short Physical Performance Battery)、歩行速度、握力といった客観的な身体機能データを含む77項目の候補因子を機械学習(XGBoost)に学習させました。モデルの検証には、解析対象の95施設のうち1施設を未知のテストデータとして残りの94施設で学習する「Leave-one-site-out交差検証」を採用しています。

開発されたAIモデル(10項目の簡易版)は、高齢者のフレイルを評価する基本チェックリスト(KCL)に基づくスコアと比較して統計学的に有意に高い予測精度(AUC 0.75)を達成しました。

新たなリスク表現型の特定

死亡リスクと機能低下リスクを組み合わせて患者を4つのグループに分類した結果、死亡リスクは低い(生存率89.0%)ものの、1年以内に57.0%が身体機能を失う「低死亡・高機能低下リスク群」(1,732人)が同定されました。

従来の死亡リスクを中心とした評価では見過ごされてきた集団が明らかになり、生命は助かっても自立した生活を失うというリスクが可視化されました。

今後の展開とWebアプリの開発

研究グループは、臨床現場の医師や理学療法士が日常的に活用できるよう、退院時のリスク推定や身体機能パラメータ改善の効果をシミュレーションできるプロトタイプのWebアプリケーションも開発しています。

今後はツールの臨床的有用性を検証する研究を進める予定としており、退院時にリスクの高い患者を特定して集中的なリハビリテーションや個別化された退院支援計画を提供することを目指しています。

論文情報

  • タイトル:Machine Learning Predicts Functional Decline and Risk Phenotypes in Older Patients With Heart Failure
  • 著者:Kanji Yamada, Nobuyuki Kagiyama, Tomoyuki Morisawa, Masakazu Saitoh, Kentaro Iwata, Michitaka Kato, Koji Sakurada, Yuji Kono, Yuki Iida, Masanobu Taya, Yoshinari Funami, Kentaro Kamiya, Tetsuya Takahashi.
  • 掲載誌:Journal of Cardiac Failure
  • 公開日:2026年8月20日付(オンライン版)
  • DOI:doi.org/10.1016/j.cardfail.2026.08.005

本記事は順天堂大学および日本循環器理学療法学会の発表をもとに作成しています。

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