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立命館大など、アニオンで電子状態を変える直交型カチオンを開発

立命館大学生命科学部の前田大光教授や小林洋一教授、九州大学先導物質研究所の福原学教授らの研究チームは、東京科学大学や東京工科大学の研究者らと共同で、アニオンの種類に応じて構造や電子状態を変化させることができる新たな直交型カチオンを開発した。このイオンペアは光や圧力に応答して性質が変化することから、次世代の光触媒や電子材料への応用が期待される。研究成果は2026年8月17日(現地時間)に英国王立化学会誌「Chemical Science」に掲載された。

重金属を使わない分子触媒設計の背景

重金属を含まない軽元素を基盤とした光レドックス触媒は、資源の入手性に優れ、金属による汚染の懸念が少なく低コストで利用できる利点を持つことから注目されている。分子触媒の設計では、電子豊富なπ電子系と電子不足なπ電子系を適切な距離と角度で配置し、光照射による電子移動を効率よく引き起こすことが重要とされる一方、電子状態や電子移動挙動を外部要因で制御する手法の開発が課題となっていた。研究チームは2005年からアニオン会合能を示すπ電子系としてジピロリルジケトンの研究を進め、ホウ素錯体などを活用した機能開拓に取り組んできた。

研究チームは、3つのベンゼン環が縮環したフェナレニル骨格に着目し、ヒドロキシフェナレノンをホウ素に導入したジピロリルジケトンホウ素錯体1+-Cl–を新たに設計・合成した。ホウ素部位が四面体型の構造をとるため、ジピロリルジケトンとフェナレニル部位が直交型に配置される。1+-Cl–はイオンペアメタセシスにより、BF4–, PF6–, B(C6F5)4–, PCCp– (ペンタシアノシクロペンタジアニド)などのイオンペアへの交換が可能となっている。

検証の結果、Cl–イオンペアはピロール環が反転した安定な会合体を形成する一方、より大きなアニオンでは非会合型構造をとることが分かった。また、対アニオンの種類によってジピロリルジケトン部位の電子状態や励起状態の寿命が変化し、光誘起電子移動の挙動を制御できることが示された。さらに、圧力を加えることで吸収スペクトルが変化することや、Cl⁻イオンペアにおいて二重のiπ–iπ相互作用による特徴的な集合体を形成することも明らかにした。

将来の電子・光機能材料への応用展開

本研究は、外部刺激によって電子移動を制御する新しい有機材料の開発に向けた知見となる。イオンペア集合体を利用した電気伝導材料において、光励起による電荷キャリア生成を可能にする新たな設計概念を提示するものであり、将来的には電子・光機能材料や有機エレクトロニクス分野への応用が期待されている。なお、本研究は文部科学省科学研究費補助金および立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)などの支援によって実施された。

論文情報

  • 論文名:Anion-controlled ion pairing and assembly of p-electronic cations with orthogonal p-systems
  • 著者:Yohei Haketa, Tomoka Inoue, Taichi Abiko, Shunsuke Kobashi, Ryota Sato, Yoichi Kobayashi, Kotaro Matsumoto, Tomoyuki Hamachi, Gaku Fukuhara, Tatsuki Morimoto, Rio Kugizaki and Hiromitsu Maeda
  • 発表雑誌:Chemical Science
  • 掲載日:2026年8月17日(月)(現地時間)
  • DOI:10.1039/d6sc05424b
  • URL:https://doi.org/10.1039/d6sc05424b

本記事は立命館大学などの発表をもとに作成。

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