順天堂大発研究グループ、健康寿命競うXPRIZEの決勝進出20チームに選出
順天堂大学大学院医学研究科の堀江重郎特任教授(創造長寿医学講座)が代表を務める研究グループ「Japan Longevity Consortium(JLC)」が、国際科学技術コンペティション「XPRIZE Healthspan」のファイナリストである決勝進出20チームに選出された。本コンペティションは人の健康寿命を大幅に延ばす医科学的アプローチを競うもので、総額1億100万ドル(約156億円)の賞金をかけて2023年に開始された。58か国から600を超える応募があり、2025年5月の世界40チーム選出を経て今回の20チームに絞り込まれた。
総額1億100万ドルの国際コンペティションで決勝進出
XPRIZEは米国に拠点を置く賞金型の国際研究開発プラットフォームで、課題解決型イノベーションの促進を目的としている。これまでに宇宙探査や海洋探査、炭素除去、教育などのテーマを扱ってきた。XPRIZE Healthspanは、加齢メカニズムの解明やバイオマーカーの進歩を背景に、科学的根拠に基づいた介入で健康寿命の延伸に挑む競争的研究となる。
JLCには、順天堂大学、東京大学、国立精神・神経医療研究センター、国立感染症研究所の研究者に加え、臨床医、エンジニア、作業療法士、シェフ、俳優、ダンスやヨガのトレーナーなどが参画し、ヤマハ音楽振興会とも提携している。代表の堀江特任教授は、選出を光栄に思うとした上で、日本の生活文化に根ざした知恵を科学の言葉に翻訳し、世界の人々が実践できる形にすることが使命であるとコメントしている。
禅の生活様式に着想を得た独自プログラム

JLCの取り組みは、日本人男性の禅僧4,352名を24年間追跡した疫学研究で、一般の日本人男性集団と比べ全死因の標準化死亡比が0.82(死亡率が約18%低い)と報告された知見を出発点としている。坐禅や食事、作務、読経といった生活様式のどこに長寿の要因があるかを現代の計測技術で解き明かすことを目指している。
決勝で提供される健康プログラム「Scientific Zen」は、深い没入状態である「Flow(フロー)」を誘導・定量・調整が可能な生理学的状態としてとらえる点が特徴となる。脳波(EEG)による独自のフロー指標と心拍変動の連続測定を組み合わせ、介入の強度をリアルタイムに調整する技術(特許取得済)が用いられる。構成モジュールは以下の5点である。
- 運動(レジスタンス・有酸素)
- 食事指導(和食ベースの食事+緩やかな断食)
- 合唱(神経同期の誘導)
- 認知ワーク(適応的な注意負荷)
- AIによる在宅伴走支援
120名を対象とした臨床試験と2030年の最終審査へ
決勝においてJLCは、120名を対象にScientific Zenの効果を検証するランダム化比較試験を12か月間にわたり実施する。筋肉機能、認知機能、免疫機能の3領域で10年以上の若返りを目標に掲げる。
試験データは、全ファイナリスト共通の評価基盤であるユタ大学データセンターおよびUCSD中央検査ラボに提出され、2030年の最終審査において世界各国のチームと同一基準で比較評価される予定となっている。
今後の展開
順天堂大学は本プロジェクトを通じ、以下の展開を見込んでいる。
- エビデンスに基づく「未来型健康プログラム」の開発と社会実装
- 老化介入研究における生物学的バイオマーカーの妥当性検証
- 国際的な研究連携・臨床応用の推進(アジア・欧米とのネットワーク形成)
本記事は順天堂大学の発表をもとに作成。
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