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福岡県宇宙ビジネス研究会が第3回会合開催 地上技術の月面探査参入を議論

福岡県宇宙ビジネス研究会は、2026年10月22日、天神ビジネスセンターⅡ内のFukuoka Innovation Lab. Tenjinにおいて『FUKUOKA SPACE BUSINESS MEETUP 2026』第3回を開催した。会場には宇宙ビジネスに関心を持つ企業、大学、行政など多様な参加者約80名が集まり、月面探査に向けた地上技術の参入ポテンシャルについて議論が交わされた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や民間企業などの登壇者が、月面開発の現状や非宇宙分野の技術が活躍する可能性を語った。

地上と宇宙をつなぐ共同研究と技術転用の実例

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探査イノベーションハブ副ハブ長である櫛木賢一氏は、10年から20年先の宇宙探査に必要な技術を新たなプレイヤーとともに生み出す取り組みを紹介した。同ハブでは2015年の発足以降、全国300を超える機関と235件の共同研究プロジェクトを進めており、参加機関の約9割を従来は宇宙を主たる事業領域としていなかった企業や大学が占めている。

地上技術の転用例として紹介された小型月着陸実証機「SLIM」搭載の小型月面探査ロボット「SORA-Q」には、玩具メーカーが培った変形機構や民生用小型コンピューターが活用された。打ち上げ時は直径約8センチメートルの球体に収まり、重量は約225グラムで、月面に放出された後に変形して細かな砂状のレゴリスの上を走行した。宇宙参入においては必ずしも宇宙専用技術の実績が必須ではなく、地上で培った技術の本質を宇宙の課題に結び付けることが重要であると示された。

高頻度な月面輸送がもたらす新たな産業需要

株式会社ispaceのEVP、ミッション統括兼降着系姿勢航法誘導部ディレクターの日達佳嗣氏は、月輸送サービスと月着陸船の開発現場で求められる技術について講演した。将来的に着陸船の大型化や打ち上げ頻度の向上が進むにつれ、燃料タンクの軽量化や短納期調達が求められる推進系、LiDARなどを用いた測距や障害物検知を担う航法誘導、通信、電源など各領域で技術革新が必要になる。

高頻度のミッションを実現するためには、単に一機を高い精度で製造するだけでなく、同じ品質の機体を繰り返し製造できる生産技術や、複数ミッションを同時に管理する運用システムが不可欠となる。自動車や産業機械、通信機器、精密加工、ソフトウェアなど、地上産業が日常的に向き合っている課題と重なる部分が多く、単なる受発注の関係を超えて段階的に技術を育てる長期的なパートナーシップの重要性が語られた。

建築と統合技術から考える月面居住

株式会社竹中工務店で宇宙建築タスクフォースを率いる佐藤達保氏は、地上で培った建築設計や施工の技術を将来の月面居住へ展開する挑戦について語った。月面建築では、人が安全に活動するために構造、電源、空調、通信、衛生設備などを総合的にまとめる必要があり、異なる技術を統合して空間をつくり上げる建設業のノウハウが生かされる。

月面で求められる自動化、遠隔施工、ロボット活用などの技術研究は、地上の建設現場が抱える人手不足や生産性向上といった課題の解決にも直結する。佐藤達保氏は、構想を発信してフィードバックを受けながら社内外に仲間を増やしてきた経緯を振り返り、継続的な活動の大切さを伝えた。

仕様未定の市場で求められる仮説構築

九州工業大学革新的宇宙利用実証センター特任准教授の布施哲人氏や、宇宙探査イノベーションハブで事業化を担当する坂井篤氏らは、非宇宙企業の実践的な参入アプローチを提示した。月面産業は完成品メーカーを中心とした仕様がまだ固まっていないため、要求仕様を待つのではなく、自社技術を起点に「月面でどのような課題を解決できるか」という仮説を示せる企業に参入の余地がある。

自社の技術や強みを言語化し、宇宙の課題と照らし合わせて仮説を立て、研究機関や企業と検証を重ねるプロセスが重要とされる。福岡・九州に蓄積された半導体、自動車、ロボット、素材、ソフトウェアなどの産業基盤を生かし、経営層を巻き込んだ長期的な投資として宇宙分野に向き合う姿勢が共有された。

本記事は福岡県宇宙ビジネス研究会の発表をもとに作成。

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