Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能、2025年夏に廃止へ – 概要と代替策、移行方法を解説

Microsoftが提供する認証アプリ「Microsoft Authenticator」は、二段階認証などに用いられるワンタイムパスワード生成機能だけでなく、ウェブサイトのログイン情報(URL・ID・パスワード)を管理するパスワード管理機能も備えています。手軽に利用できる便利な機能として一部のユーザーに活用されてきましたが、この機能が2025年夏以降に廃止されることが発表されました。
Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能が2025年夏に廃止
本稿では、Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能の概要、既存データのインポート方法、そして迫り来る機能廃止の詳細とその背景について解説します。機能廃止に備え、今後どのような対応を取るべきかについても考察します。
Microsoft Authenticator パスワード管理機能の概要と特長
Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能は、その名の通り、さまざまなウェブサイトやサービスのログインに必要な情報を一元管理するための機能です。
- 管理対象
ウェブサイトのURL、ID、パスワードの3要素を登録、編集、閲覧することができます。 - 連携
登録されたパスワードデータはMicrosoft アカウントに紐づけられ、クラウド経由で同期されます。これにより、Authenticatorアプリがインストールされたスマートフォンだけでなく、Microsoft EdgeやChrome(拡張機能を利用)などのWebブラウザとも連携し、自動入力などに利用することが可能でした。 - 利便性
スマートフォンのアプリから手軽に呼び出せるため、外出先などでもログイン情報の確認や自動入力が利用できる点が利点と言えます。
利用中のパスワードデータをインポートするには
別のパスワード管理ツールやブラウザからエクスポートしたパスワードデータを、Microsoft Authenticatorに取り込むことも可能です。手順は以下の通りです。
- Microsoft Edgeや別のパスワード管理サービスからパスワードデータをCSVファイル形式でエクスポートします。
- エクスポートしたCSVファイルをAuthenticatorアプリをインストールしたスマートフォンに転送します。
- スマートフォンのAuthenticatorアプリを開き、画面下部メニューの「Passwords」をタップします。
- 画面右上の […] アイコンをタップし、「設定」を選択します。
- 設定メニューの中から「パスワードのインポート」を選びます。
- インポートしたいCSVファイルを選択します。取り込みが完了すると、セキュリティのために元のCSVファイルは端末から自動的に削除されます。
2025年夏、機能廃止へ – その背景とは
Microsoftは、Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能について、段階的な廃止スケジュールを発表しています。
- 2025年6月1日以降
Microsoft Authenticatorアプリ内で新規のパスワードを保存することができなくなります。 - 2025年8月以降
Authenticatorアプリに既存で保存されているパスワードにもアクセスできなくなり、パスワード管理機能は完全に利用できなくなります。
この機能廃止の背景には、いくつかの要因があると考えられます。主な理由として挙げられているのは以下の点です。
- パスキーを活用したパスワードレスサインインの推進
より安全で利便性の高い認証方法であるパスキーの普及に注力するため、相対的にセキュリティリスクのあるパスワードベースの認証方法への依存度を下げる狙いがあります。 - セキュリティ対策の強化
リモートデスクトッププロトコル(RDP)などを標的とするパスワードスプレー攻撃(辞書攻撃の一種で、少ないパスワード候補を多数のアカウントに対して試行する攻撃)といったパスワードに関連するサイバー攻撃への対策として、パスワードへの依存度を低減させる方針の一環と言えるでしょう。
今後の対応と代替サービスへの移行を検討
Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能は、Microsoftのエコシステム内で手軽に始められるという利点があった一方で、多機能な特化型パスワードマネージャーと比較すると機能面で限界があったことも事実です。
2025年夏の機能廃止により、利用者は保存しているパスワードデータにアクセスできなくなるため、速やかに代替手段への移行を検討する必要があります。移行先としては、以下のような選択肢が考えられます。
- Microsoft Edgeのパスワードマネージャー
Edgeブラウザには標準でパスワード管理機能が搭載されており、Microsoftアカウントと同期されます。Authenticatorで管理していたパスワードをEdgeにインポートすることで、引き続きMicrosoftのエコシステム内で管理を続けることが可能です。 - 他社製パスワード管理サービス
高機能なパスワード生成、セキュリティ診断、家族間共有など、より充実した機能を求める場合は、LastPassや1Password、Bitwardenなどの専門のパスワード管理サービスへの移行も選択肢となります。これらのサービスはクロスプラットフォームに対応していることが多く、様々なデバイスやブラウザで一元的にパスワードを管理できます。
ご自身の利用状況や求める機能に合わせて、最適な代替サービスを選び、早めにパスワードデータのエクスポートと移行作業を進めることを推奨します。
まとめ
Microsoft Authenticatorのパスワード管理機能は、その手軽さから一部で利用されていましたが、2025年6月1日以降の新規保存停止、そして2025年8月以降の完全な機能停止が決定しています。これは、Microsoftがパスキーを中心としたパスワードレス認証への移行を進め、パスワード関連のセキュリティリスクを低減させるための重要な施策と言えるでしょう。
この変更に対応するためには、Authenticatorに保存しているパスワードデータをエクスポートし、Microsoft Edgeのパスワードマネージャーや他社製の専門サービスなど、別のパスワード管理ツールへの移行が不可欠です。早めに移行計画を立て、大切なログイン情報を安全に管理するための準備を進めることが、これからのデジタルライフにおいてますます重要になります。